小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

感想

今年はこういうの読みました2023

2023年も終わりです。ゴールデンウィーク明けにコロナが5類になり、いよいよコロナ前の日常を取り戻していこうと思ったら円安で物価がどんどん上がっていく。インフルも大復活を遂げて、一難去ってまた一難という感じ。 ですが、どれだけ世界が変わろうと、…

『完全自殺マニュアル』鶴見済著1993年(太田出版)

これまでの人生自殺したいなんて思ったことのない俺が、周りにいる死にたがりの道化どもより先にマニュアルに目を通したことで、もうやつらのリスカやODのごっこ遊びをみても動じなくなる。これが本書を読む第一のメリットだ。 さて、本書はタイトルそのまま…

ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む⑤

ウィル・アイズナーがマンガについて論じた『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』。その文献紹介も今回で最後となります。 今回扱うのは第7章と第8章。どちらもマンガ表現それ自体を扱うことはなく、第7章は社会におけるマンガの使用について、第8章…

今年はこういうの読みました2022

どんどん1年の過ぎる速度が速くなっています。この調子だと10年ぐらいしたら12ヶ月なんて半日ぐらいで終わってしまいそうです。さて、今年はあいかわらずCOVID-19の影響を受けたり受けなかったりで、落ち着かない1年でした。こんな時、本を読むと日々の暮ら…

生きづらさを抱えた主体であること――地下アイドルとスタートアップの交差点に立って――

どうも、つおおつです。近況報告としては、最近サイコミというアプリをダウンロードしました。こちらはサイゲームズの運営する漫画アプリなのですが、1話あたりのページ数が14Pしかなく、1話1話がかなりあっさりしている印象を受けます。そして1日にデフォル…

ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む②

はじめに 前回に引き続き、ウィル・アイズナーの『コミックス・アンド・シーケンシャルアート(Comics and Sequential Art)』を読んでいく。 sho-gaku.hatenablog.jp 今回読んでいくのは第3章「TIMING」だ。本章でアイズナーはコミックにおける時間の表現に…

ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む①

はじめに 小文化学会では特に方針を定めず、会員がめいめい好きな事柄について筆を運んでいる。打ち合わせも特にない自由な空間で、だいたいの寄稿者が1度は焦点をあてているジャンル、それがマンガだ。おのずと手が伸びるほど読みなれているが、それゆえに…

チ。あるいは、地、知、血、

こんにちは、ヱチゴニアです。 この記事は『チ。-地球の運動について-』という漫画の考察記事です。 「サーチできにくくすることで、自分だけの意見を考えるきっかけに」してほしいとの考えから、作者の魚豊は本作を『チ。』と短く命名したそうです*1。 その…

今年はこういうの読みました2021

早いもので2021年も終わりです。オリンピック・パラリンピックの開催、一昨年末から続くCOVID-19の世界的な感染拡大。世界で何が起きようと、世界がいかに変わろうと、結局は自分で決断して、生きていくほかありません。判断を他者に投げださないためにも、…

エロマンガレビュー 新堂エル『変身』-その魔力の根源と暴走―

「変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね」 西尾維新著『零崎人識の人間関係』より。いーちゃんのセリフ。 いくつかのエロマンガには魔力がある。 名作と呼ばれるそれらは、読者の心に何か残るものを突き刺し、彼らをして友達に勧めさせたり感想をブログや商…

マサツグ様からミヤモトが削除されたのはなぜか

1.はじめに 2.『マサツグ様』の書籍化 2-1.ウェブ版の『マサツグ様』 2-1-1.『マサツグ様』 2-1-2.徹底した俺TUEEEE 2-2.書籍での『マサツグ様』 ①マサツグの過去について ②クラスメイト、ならびにミヤモトの削除について ③ヒロインたちのキャ…

練馬大根の食レポ

東京都練馬区の特産品、練馬大根をご存知だろうか。この記事は、幻の存在となった練馬大根の食レポである。

瞬間、ハンタ読者の脳内に溢れ出した、存在しない記憶

東堂葵 16歳 冬 己の肉体と術式に限界を感じ、悩みに悩み抜いた結果、彼がたどり着いたのは、一日一万回、感謝の拍手であった。 元ネタのネテロ会長の修行シーン このナレーションはHUNTER×HUNTERのネテロ会長の修行シーンを文字ったものである。 呪術廻戦 …

クジラックスの『ろりとぼくらの』をアッサンブラージュする――エロマンガのエロい・エロくないを分析する②――

『ろりとぼくらの』として誕生する前の『ろりとぼくらの』 久しぶりにエロマンガをテーマに記事を書きたいと思います。 分析対象をクジラックスの『ろりとぼくらの』とした本稿は、エロいエロくないというよりかは、ヒットの分析となりました。なので正確に…

【推しの子】 アクアはアイになりたいのか

こんにちは。ヱチゴニアです。 今回は『【推しの子】』という作品の考察をしようと思います。『【推しの子】』は赤坂アカ原作、横槍メンゴ作画で週刊ヤングジャンプにて2020年21号より連載中の漫画で、推しアイドルの子供に転生した双子が成長し芸能界へと足…

今年はこういうの読みました2020

中国でよう分からん肺炎の症例が確認されたと思ったら、あっという間に世界中へ感染が拡大して振り回された2020年。家にこもって活字を読む機会が多かったのではないでしょうか(読む量が増えたかどうかはさておき)。来年もきっと続くであろう新しい生活様式…

『図書館の魔女』と地下水道

こんにちは、暗渠が大好きなヱチゴニアです。これまで何度か暗渠を探索する記事を書いてきましたが、今回は少し趣向を変えて、小説の中に登場する暗渠についてです。 2017年末の記事でわずかに触れましたが、暗渠は文学作品の中にときどき登場します。こうい…

今年はこういうの読みました2019

ここ最近活動していないので、小文化学会は冬枯れた野原のように息の根が止まってしまったと思ったそこのアナタ! ぶっちゃけ否めません。とはいえ〆るところはきちんと〆ます。来年がんばるために、せめて今年の足跡を留めておきたい。毎年恒例の「今年はこ…

活動報告 エロマンガ読書会

皆さん、春ですね。ぽわとりぃぬです。新入生、新学年、新入社員といった新たな環境をよろめきながらも歩き始めた頃かと思います。あらゆる繋がりがリセット/更新されるこの時期、何か新しい楽しさはないかとネットをポチポチしてみたりもするでしょう。 そ…

男性向け成人コミックにおける「コンドームの銘柄を記載する描写」に関する一考察 ーじょろり『大好き。』を例としてー

コンドームが出てくる作品の中で、割合としては少ないですが、「コンドームの銘柄を記載する描写」を含む作品があります。今回はコミックホットミルク2019年5月号掲載、じょろりの『大好き。』を例としてそのような描写について考察しようと思います。

今年はこういうのを読みました2018

2018年は終わるがキャラバンは進む。私たちも同じ場所や時間に留まりつづけることはできません。ならば日々成長あるのみ。今年は幸いにも方々でリアルな集いができたり、新しい方の寄稿があったりとモゾモゾ活動できたのではないかと思います。そんなわけで…

『Sweet』・民主党・政権交代ーーー『「女子」の誕生』でわかること

どうも。つおおつです。今回は、米澤泉『「女子」の誕生』(2014)の知識を借りながら、ファッション誌と日本の政治で同時に起きた「政権交代」ついて小規模な考察をしていこうと思います。 感想

感想『闘争領域の拡大』―救いとしての『プリンセスメゾン』と美少女動物園アニメ―

「や、絶対イケる、ワンチャン。」 と、ツイッターでエンカ予定の女子と恋仲になることを絶対的に確信する、つおおつの友人のG氏。ここまではG氏によくあることなんですが、その直後つおおつとG氏の先輩であるO氏が開いた言葉によって、つおおつとあの作品の…

『放浪記』は古くて新しい

どうも、つおおつです。あれ?次の記事はカカフカカについてのことじゃないって?HAHAHA!君はなんて物覚えがいいんだ!HAHAHA! 甦れ私の意欲甦れ私の意欲甦れ私の意欲甦れ私の意欲… 閑話休題。今回は、林芙美子の『放浪記』の作中の詩をとりあげ、それとつ…

恋愛しない若者たち ~カカフカカでわかる連帯結婚~

どうも。つおおつです。 ついにアニメを定期的に見るという習慣がなくなってしまい、(一気見が主に)その代わりに『プリンセスメゾン』、『東京タラレバ娘』、『午前3時の無法地帯』などで女性向け漫画の面白さに気付き始め、ジャンカラで「Q&Aリサイタル…

他者依存による自己の存在承認とその戦略《童貞という立場から》

6年間の男子校生活を終え、大学に進学してしばらく経ったころ。 人は環境の変化による価値の再構成時に自己の同一性が保てなくなるらしく、その煽りを受けたのか、あるいは頭が混乱状態にあったのか、真相は不明だがあろうことか僕は生まれてはじめて恋をし…

今年はこういうのを読みました2017

2017年も終わりですね。何かを達成したような、達成できなかったような1年でした。ただ、読んだ本は確実に糧になったといえるはずです。そんなわけで(?)会員が読んだ本をおのおの紹介して、今年の小学の活動を締めくくりたいと思います。

『「地の塩」殺人事件』と湾岸戦争の関係

Ⅰ. 概要 このレポートでは、イスラエル人作家シュラミット・ラピッドによる『「地の塩」殺人事件』(1992)という作品における推理小説という形式と湾岸戦争の描写の関係について考察する。 まず、『「地の塩」殺人事件』の推理小説としてのプロットについて…

差別とヘイトが溢れかえる世界の行き着く未来に希望はあるのか?”〜迫害されながらも共存を求め戦い続けるマイノリティヒーローたちから学ぶこと〜”

久々の投稿となります。さて皆さんはX-MENというアメコミのヒーローチームをご存知でしょうか?アメコミの2大巨頭の一角とも言うべきMARVEL社の看板ヒーローチームの一つで同名コミックの主人公たちです。 簡単に紹介させていただきますと1963年に原作スタン…

プリンセスメゾンのススメ―沼ちゃんが教えてくれる東京の新しい生き方―

はじめまして。つおおつと申します。 2016年は例年と同じように、いろんなアニメが放送され、いろんな作品が話題になりました(総花的)。しかしこのつおおつ、残念ながらそういう文化の波に去年はまったく乗れませんでした。 仕方ないですね、初めての一人…