男性向け成人コミックにおける「コンドームの銘柄を記載する描写」に関する一考察 ーじょろり『大好き。』を例としてー

どうも。つおおつです。

最近は青春18きっぷを使って、日帰り温泉に行くのにハマってます。

[公式]かつらぎ温泉 八風の湯(はっぷうのゆ) 和歌山県伊都郡の天然温泉

ここは館内もキレイで、休憩所も広くておまけに漫画もあって駅から近く、温泉もいろんな種類があって楽しめたので良かったです。

大阪駅から2時間という遠からず近からずな距離もちょうどいいですね。

閑話休題。

今回は、男性向け成人コミックにおける「コンドームの銘柄を記載する描写」について考察してみようと思います。

コンドームそのものについては説明不要でしょう。男性器に被せて使う避妊具です。

現実世界の大学生の7割が、毎回のセックスでコンドームを必ず用いて避妊している一方*1で、男性向け成人コミックで描写されているセックスの多くが膣内射精、あるいは膣外射精によるセックスとなっています*2。

さて、そのような状況下に置かれる成人コミックでコンドームを使う意義は一体何でしょうか。

つおおつが思うに、

1.相手への思いやり、「いちゃらぶ」性の上昇（「いちゃらぶシチュ」の場合）
2.性行為者（特に男性）の未熟性の強調
3.避妊しないより気持ちいいセックスの存在の暗示

の3つが挙げられると思います。それぞれ簡潔に説明します。

1について。コンドームを着用することは、望まない妊娠やパートナーに性感染症が移ることを防止するためであります。極論を言ってしまえば望まない妊娠が起こっても男性視点で見れば困ることはありませんが（少なくとも物理的、肉体的負担としては）、それにもかかわらず「予めコンドームを買っておき、セックスの直前にいちいち着用する」というコストと手間をかけるのは、性行為の相手に対する思いやりに他なりません（いわゆる「いちゃらぶ」シチュの場合には）。そしてその思いやりを前景化することで「いちゃらぶ」性の上昇をもたらしていると言えるでしょう。

2について。避妊する理由として、子供を養う経済的余裕がないというのが挙げられます。特に無避妊が多い成人コミックであえてそれを描写するのは、一般的に女性を養わなければいけないとされる男性側の若さや、経済的・精神的未熟性を強調する働きがあると考えられるのではないでしょうか。

3について。成人コミックにおける「ゴムが切れちゃったからナマでしてナマえっちの快感にハマってしまうカップル」の描写はもはやクリシェとなってしまっている側面もありますが、クリシェとなるくらいにコンドームの存在がより気持ちいいとされる無避妊のセックスを暗示していることは否定できないでしょう。

1,2,3の要素がどのようにコンドームが出てくる成人コミックに散りばめられているかについて語るとキリがなくなるので今回は正面切ってとりあげません*3。

さて、コンドームが出てくる作品の中で、割合としては少ないですが、「コンドームの銘柄を記載する描写」を含む作品があります。今回はコミックホットミルク2019年5月号掲載、じょろりの『大好き。』を例としてそのような描写について考察しようと思います。

この作品のストーリーを簡潔に述べると、クリスマスに、同じアイドルグループを推しているカップル（おそらく学生）が、お互いの好意を再確認したあと、徹底的ないちゃらぶエッチをする話です。

アイドル推しの女学生（おそらく）

愛情の再確認（左上のクリスマスツリーに注目）

そのような一連の流れで、男性がコンドームをつけるシーンが出てきます。

ここで描写されてるのは0.01mmのコンドーム。日本で発売されてるコンドームで0.01mmであるのは「オカモトゼロワン001ミリ」と「サガミオリジナル0.01」の2つのみ。全く同じデザインではありませんが、そのどちらかと考えられるでしょう。

オカモトゼロワン0.01ミリ3個入り

サガミオリジナル 0.01 5個入

 両者とも1コ当たり200円を超えます。これはアマゾンのコンドーム売り上げランキング1位の「めちゃうす 1000」12コ入り3パックが800円で売っていることを考えると(1コ当たり22円)、とても高価であると言えるでしょう(約10倍)。

めちゃうす 1000 1箱12コ入×3パック 【SKYN お試しサンプル付】

ではなぜこのカップルはそのようなコンドームを使うのか。一般的にコンドームは薄ければ薄いほど相手の感触をじかに感じられ、性的快感が増すと言われています。

できるかぎり相手のことを感じたくて、気持ちよくなりたい。でも避妊はしなくちゃいけない。だから、できる限り薄いコンドームを選ぶ。そのためなら経済的コストは厭わない。

というカップルの相思相愛ぶりが、「コンドームの銘柄を記載する描写」によって強調させられています。しかし、この描写が強調するのはそこだけにとどまりません。

次のページにこのような描写があります。

まさに、「ゴム無し」に一番近いとされる「001」だからこそ、「避妊しないより気持ちいいセックスの存在」の暗示効果が強まっていると言えるのではないでしょうか。

つまり、コンドームが「001」であることを描写することによって、前述したコンドームの持つ1と3の効果がより強調されていると言えます。

さて、男性向け成人コミックにおける「コンドームの銘柄を記載する描写」についてまとめておきましょう。

今回取り上げた例では、コンドームの持つ1と3の効果（「いちゃらぶ性の向上」と「無避妊えっちの暗示」）が強調されていました。

しかし、今回は1と3が強調されましたが、記載されている銘柄が安いコンドームの場合（たとえば先述した「うすぴた」など）は、むしろ2の要素（「男性の未熟性」）を強調し、1の要素を目立たなくする効果を持つと考えられるでしょう。

よって、男性向け成人コミックにおける「コンドームの銘柄を記載する描写」の持つ効果は、成人コミックにおいてコンドームを使うセックスの持ついくつかの要素を強調したり、目立たなくする効果がある、言い換えれば作者はコンドームの銘柄を記載することでそのセックスの持つ意味合いをある程度操作することができると言えるのかもしれません。

そうやって日々の成人コミックを読むと、また面白いことが見つかるのではないでしょうか。

最後に、4/27(土)は小文化学会の新入生歓迎会が名古屋で行われます。

sho-gaku.hatenablog.jp

この原稿を書いているつおおつも大津から新快速に乗って参加する予定です。やることは暗渠めぐりとこの記事とは「ほとんど」関係ない内容ですが、この記事を通して小文化学会の活動に興味を持ってくださったら幸いです。もちろんこの記事の感想を直接伝えに来てもらうのも大歓迎です。それでは。

（敬称略）

*1:

忠津佐和子ら(2009)「大学生の性感染症予防行動および避妊行動に対する
意識・態度の実態調査 ー青年期ピアカウンセリングの基礎資料としてー」『川崎医療福祉学会誌 』19(1) pp93-103,川崎医療福祉学会

http://www.kawasaki-m.ac.jp/soc/mw/journal/jp/2009-j19-1/8_tadatsu.pdf

*2:男性向け成人コミックにおけるコンドームの使用割合を量的に調査するべきかもしれませんが、今回は省略させて頂きます。後ほど調べて寄稿する予定です

*3:柴崎ショージ『あたたかいへや』がコンドームが出てくる成人コミックの最も良い具体例になると思われますので気になる方は読んで頂けると嬉しいです。