小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

小文化学会の案内

 みなさんはじめまして。小文化学会のブログへようこそ!

    小文化学会(以下小学)は2016年9月1日に設立された学生を中心とする、総合思考サークルです。関心領域は会員の自由。あなたの探求するものが、小学の探求するものになります。

 「学会」と称していますが、当然ながら実際に学会として運営される団体ではありません。あくまで「ごっこ遊び」のようなものだとお考えください。しかし模倣とはいえ「学会」の体裁を取る以上は真摯に活動していきたいと思っています。

 具体的には以下の活動を行う予定です。

・記事の作成と当ブログへの寄稿

・記事をまとめた冊子の作成、配布

・書物・アニメ等を用いた勉強会

 

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 当会へのご連絡は、本ブログの各記事のコメント欄(当記事でも差し支えありません)か、Twitterアカウントのツイートへのリプライ、またはDM、小学のeメールアドレス(shobunkagakkai☆gmail.comの☆を@に変更)にお願いいたします。いきなり入会をする必要はございません。興味、意見を少しでも持っていただいたら、お気軽にご連絡ください。

 

植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(下)

5.おわりに

 以上、長くなったが植野の視点から物語を俯瞰した。ようやく前節で掲げた問い、すなわちヒロイン=植野は何に負けたのかについて答えが出せる。

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植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(中)

4.ヒロインは何に負けるのか

 ようやく本題に入る。分析対象は漫画『聲の形』である*1別冊少年マガジンで2011年2月に読み切りが掲載されたのち、週刊少年マガジンで2013年36・37合併号(8月7日発売)から2014年51号(11月19日発売)まで連載し、単行本は全7巻発刊された。聴覚障碍を持つ西宮硝子と石田将也の交流を中心にコミュニケーションでの困難とその克服を描いた作品、という要約で間違っていないと思う。

 大雑把な時系列を先に記しておくと、第1巻の1話から4話までは石田の通う小学校に硝子*2が転校してきた小学6年次の1年間に紙幅の大半が割かれ、それ以外は第6巻に収録されている主要キャラクターの独白的なエピソードを除き、ほぼ石田たちが高校3年次の1年間に沿って進み、彼らの成人式当日で幕を閉じる。主に石田の1人称視点で世界は描かれており、彼が拒絶した人物の顔に貼られる×印によって象徴的に表される。

 当作品は2016年に山田尚子監督によってアニメーション映画化(制作は京都アニメーション)されており、何度かテレビ放映もされたのでそちらをご覧になった方もみえるだろう。また講談社青い鳥文庫から上下巻構成でノベライズされており、原作コミックスにないシーンもあるが本稿では漫画のみを対象とする。ここまで来てわざわざ伝えるまでもないが全編にわたる内容を対象とするので、その点ご理解願いたい。

 分析手法はいたってシンプルで、何度も述べているように特定のキャラクターと彼女が好意を寄せるキャラクターを中心とした関係の結合と切断の様態を追跡していく。本稿における前者は植野直花、後者は石田将也である。『聲の形』は聴覚障碍が主要な題材とされているため、どうしてもメディアの紹介や公的な利用では硝子が聾啞であることに目が向きがちになる。もちろん悉皆確認できないほど世間に溢れる考察には本稿のように他キャラクターに目を向けたものがあり、植野について似たような方針で言及しているものも存在するだろうが、再発明を承知で負けヒロインについての考察を走らせる車輪製作にとりかかりたい。

*1:なお、以下で『聲の形』から引用する際には「巻数 p.(pp.)ページ数」で出典を記載する。スタイルが混在しているが可読性を考慮した結果である旨を断っておく

*2:彼女の妹も主要人物として登場するため名前で記載する

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植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(上)

1.はじめに

 人と人が関わる時、そこにはいくつもの関係が生まれる。もっとも基本的な類では好き-嫌いが挙げられるだろう。集団内では複数人の好意が特定の人物へ集中する事態が発生しうる。その際、好意を寄せられた対象が好意を寄せた成員から1名を選び、当人のかかる感情を是認すると*1、必然的に実を結ばなかった好意を抱く者が現れる。このような状況を観測する第三者は、1人の被恋慕者に好意を寄せる複数の恋慕者について勝ち-負けで分類することが可能となる。男性を被恋慕の立場とした異性愛が前提のコンテンツ――主にマンガ・アニメ・ゲームのポップカルチャー――において、後者に選り分けられる女性は一般的に負けヒロインと称される*2

 本稿では作品内の時系列的な継起である物語内容に準拠した関係性の整理をヒロインの視点から行ったうえで、彼女は何をもって「負け」となるのかについて考えてみたい。従来のポップカルチャーに関する夥しい考察は、往々にして特定の属性や記号をあたかも符牒かのごとく用いる様式に則っている。これは前提となる術語を知っている者にとっては理解もたやすく、故に円滑な議論へ貢献さえするが、その分かりやすさは語意や語用の検討においては硬直した態度という阻害剤と化し、諸刃の剣の様相を呈する。こうした難局を打破するには、拍子抜けされるかもしれないが作品に没入してキャラクターが取り結んだり切り離したりする関係をひたすら追う手法が効果的と思われる。属性に関する思索はその作業を終えたあとでも遅すぎることはない。

*1:n股をかけるとか適当な肉体関係を結んで恋人にはならないとかいうパターンは除く

*2:女性同士の恋愛を描く「百合」作品でも負けヒロインは生じうるが、今回は触れない

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今年はこういうの読みました2020

 中国でよう分からん肺炎の症例が確認されたと思ったら、あっという間に世界中へ感染が拡大して振り回された2020年。家にこもって活字を読む機会が多かったのではないでしょうか(読む量が増えたかどうかはさておき)。来年もきっと続くであろう新しい生活様式にむけて、会員が今年読んだ本を紹介します。面白そうなのがあったらチェックしてみてください。それではよいお年を!

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ファクトフルネスと/はフィリピンの妖怪

 

今回は読書感想文。

課題図書はここ最近話題になった意識高い本『ファクトフルネス』。

 

すごい金持ちのビル・ゲイツとかバイデンの元上司のオバマが絶賛したとかで話題になって、YouTubeで検索してみればオリラジの敦ちゃんをはじめ内容を要約してくれた動画が山のように見つかる。

それ見て面白かったので自分でも実際に読んでみた。で、読んでみたら要約系動画に劣らずかなり面白かった。

だから自分もこの本で原稿書いてみようと思ったものの、今更ただ要約しただけじゃ遅すぎる。その辺に転がる謎のアニメーション使って解説してる動画と差がない。

 

 

というわけで本稿ではファクトフルネスな生き方の対極に位置するかに見える人類学の本を持ってきて、実際ファクトフルに生きるなんてできるのかを考えていきたいと思います。

 

 

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おじろく・おばさについての論文紹介

 11月22日の文フリ東京のブースにいらしてくださった方、本当にありがとうございました。私、つおおつも文フリで1万円弱冊子を買ったのですが、最近何かと忙しくほとんど読めていない状況で、恥ずかしい有様です*1

 

 忙しかったのにも訳がありまして、11月18日に会社を設立、それまで個人でやっていたいくつかの小さな事業を法人に移しました。また10月は売上が明らかに減ってしまったため設立後すぐ新型コロナウイルス融資を日本政策金融公庫に申請、12月8日に担当者の方と面談をし、なんと翌日に可決を頂け、昨日14日に借用書にハンコを押して郵送した次第です。財政自体はそこまで危機的ではないのですが、法人化に伴う圧倒的書類の量に忙殺されておりました……。

 

 閑話休題。今回はおじろく・おばさと呼ばれる人々・慣習にまつわる研究の整理をしていきたいと思います。

 

*1:面白いことを研究・評論している方の冊子は買うだけでも意味があるんだと言い聞かせつつ

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第三十一回文学フリマ東京に参加しました!

 予告していたとおり、11月22日に東京流通センター第1展示場で開催された文学フリマ東京に参加しました。ブースに来ていただいた方に、あらためてお礼申しあげます。初参加かつ従来とは違う状況でしたが、とてもいい経験になりました。備忘録も兼ねて、参加を決めてから冊子編集、作成、印刷、配布にいたるまでの道のりを残しておきます。

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推しの暗渠に有名になってほしくない

  それは、推しのアイドルに有名になってほしくないオタクの心情と少し似ている。アイドルだって地形だって、有名になって注目を集めれば否が応でも変わらざるを得ない。その変化を嘆く“古参ヅラ”はどこにでもいるのだ。

 今これを読んでいる貴方はラッキーだ。まだ有名になっていない素晴らしい暗渠が山ほどあるのだから。ただし油断してはいけない。情景は刻一刻と更新され続けている。今回は、その油断ならない一進一退の攻防を紹介したいと思う。

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第三十一回文学フリマ東京に参加します!

 当ブログ『小文化学会の生活』でトップに固定しているご挨拶の記事「小文化学会の案内」では、具体的にする活動のひとつに「記事をまとめた冊子の作成、配布」を掲げています。で、なんかつくって配ったの? ……ありません。1回もありませんでした。これまでは。

 

 2016年9月に設立して早や4年が過ぎ、満を持して会誌創刊&同人誌即売会への参加が決定しました。タイトルにもあるとおり、11月22日に催される第三十一回文学フリマ東京にて、冊子『小文化』創刊号を配布いたします。

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