小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

第三十一回文学フリマ東京に参加しました!

 予告していたとおり、11月22日に東京流通センター第1展示場で開催された文学フリマ東京に参加しました。ブースに来ていただいた方に、あらためてお礼申しあげます。初参加かつ従来とは違う状況でしたが、とてもいい経験になりました。備忘録も兼ねて、参加を決めてから冊子編集、作成、印刷、配布にいたるまでの道のりを残しておきます。

 

参加を決めるまで

「どうですかね。製本して同人イベントで売ってみるとかですかね」

 ぽわとりぃぬさんのメッセージを受け取ったのは、2020年5月22日の昼下がりです。

 当時の小文化学会は開店休業状態で、暖簾をかけているのかしまい忘れているのかも判然としない有様でした。2019年5月から1年間で寄稿された記事数は、年末に行っている本の感想を寄せあうものを含めてわずか6本。そのほとんどはぽわとりぃぬさんが書かれた記事で、定めた月3回の寄稿日も黙殺されてばかりでした。

 これはマズいと思いつつ誰も声をあげられずにいた時、先の計画が出されました。ちょうどそのころ、寄稿日を月2回とするかわりにそれまで任意だった投稿を輪番制へと変更して、定期的な情報発信を再開させる動きが起こります*1。そういった改革のひとつとして、冊子作成と即売会参加が決定したのです。

 

冊子の内容について

「11月開催の文学フリマ(東京)に申し込んでみませんか」 

 7月16日、ぽわとりぃぬさんの提案で参加するイベントに第31回文学フリマ東京を選ぶ運びとなりました。さっそく申し込み、8月31日に出店が無事決定……するも、その時点ではまだどのような内容にするか、ぼんやりとしか決まっていませんでした。

 結局、つおおつさんの「記事を選んで、ベスト・セレクション」にする形が採用されて、各人にそれまで寄稿したものから選んでもらいました。10nies(私です)とヱチゴニアさんは新作を書きおろしています。

 せっかくだしこれから小文化学会をどうしたいとか、どういう場であるべきかを話すために一席設けようということになり、その内容も座談会として盛り込むことになりました。あとから読み返して、当会を知らない方が手に取られたらいきなり訳分からん人たちが訳分からん団体について語っている構図になってしまい、やっちゃったなと思っています。

 冊子をつくると一言で言っても、レイアウト、印刷の方法などやらなければならないことがけっこう多くて、準備するのは思ったより手間がかかりました。なあなあで決めて、終わってからああすればよかった、ということばかりです。人生と同じですね。

 

前日に印刷

 なんやかんやで11月9日に各人の原稿をまとめた草稿をつくり、13日には完成稿を共有するに至りました。前記の座談会も一連のやりとりも、slackを用いて行いました。

 会場には遠隔地に住むメンバーも来てくれることになり、前日の21日に決起集会(3名)を行いました。ついでに印刷も落ち合ってからしています。そっちが本題だろって感じですが。今回はセブンイレブンのマルチコピー機を利用しました。PDFにしておけば折りたたむだけで小冊子でなるように印刷してくれるので、とても便利でした。空白のページをなくすべく4の倍数に整えるのはちょっと工夫が必要ですが、それでもだいぶ楽にできました。

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ゼミの構想発表ぐらいでしか見ない枚数

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プリントされるごとに10円がどんどん減っていくのは気持ちよささえ感じました

 目黒で製本を完了させたのち、サイゼリヤへと無意識に足が向かいました*2。確認することはほとんどないので、久々に対面で話をしました。ふだんはオンラインで記事を寄稿してばかりの当会にとって、それもいい機会となりました。

  晩餐はひとり頭で1,000円いくかいかないかでした。

文フリ当日

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朝日を戴く東京流通センター

 当日は11時過ぎに会場入りしました。布とかポップとか用意すればよかったのですが、無駄に潔い設営を1分ほどで済ませて、あとはひたすら駄弁っていました。

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設営という言葉に失礼では?

 ブースには後から来た会員やその知人友人、Twitterを見ていらした方に訪ねていただき、思ったよりも賑やかな時間を過ごすことができました。正確に販売した冊数を把握していないぐらいに手に取っていただけると思っていなかったのですが、参加した甲斐がありました。ちなみに打ち上げは大森のサイゼリヤでやりました。

反省と次回に向けて

 実際に参加してみて感じたことを、以下にまとめます*3

・背景にのぼりをたてる

 即売会にはおのおの一般参加しているのでそういうものがあるとは知っていましたが、いざ参加すると手が回りませんでした。他サークルさんは力作が多く、やる余裕があったらやってみたいと思います。

・有料コンテンツとは別に無料配布で目を引く

 今回配布したもの自体がフリーペーパーみたいな出来だったので、ちゃんと冊子を印刷所に依頼してコピーしたものを挟みたいなと感じました。

・表紙にイラスト(ポップでも可)

 これについても他サークルさんの配布物を見て感じたところです。やっぱりちゃんとつくっているものは目をひきますね。

・ポップはちゃんと用意したほうがいい(写真でもいい)

 机に並べただけでは設営とは言いがたいと思いました。

・名刺

 身元をはっきりすると、のちのち調べていただける可能性が高まりそうです。交流するならばより必須アイテムです。

・小学とは何かみたいな紙を用意する

 私たちもいまだにうまく説明できていないので、分かりやすい紹介文はあらためて考えたいと思わされました。それが配布できたら強い(?)ですよね。

 以下、参加したメンバーに寄せていただいたメッセージを載せておきます。

 

【ぽわとりぃぬ】

 表題のとおり11月22日に開催された文学フリマ東京に参加しました。ブースに来ていただいた方、買って下さった方には改めてお礼申し上げます。
 本稿は参加した感想、そして備忘録です。

 まずは出店に至る簡単な経緯から。
 10niesさんの感想をみると、なんだか俺が全ての発起人みたいです。たしかに言い出しっぺは俺ですが、10niesさんの感想に書かれてもいるように小文化学会の流れもあるし、提案するにあたって特に高い志はありませんでした。
 等身大の志はあったけど。
 等身大の志って何だよ。
 それを説明するには、10niesさんにメッセージを送る2020年5月22日より前に遡らなければなりません。

 4月。コロナからギリギリ逃げ切ってなんとか就職できた俺にあったのは漠然とした焦りでした。
 収入源が給料だけとはいかがなものか、と。
 あ、決して「コロナデカチカンガカワッター」というつまんない意識高い話ではありません。東海地方の海岸沿いに生まれ「いつか南海トラフが起きて死ぬ」という事実を見て見ぬふりして生きてこれた俺の価値観なんぞ今更コロナ程度じゃびくともしません。
 あの頃漠然とあった焦りとは、会社員という1つの環境に依存することへの抵抗感と言い換えられます。 
 なんせ月20万もらえるうえに、飯と住居と年の近い女まで用意され、あげく人間ドックに他人の金で受診できるというのですから、その依存度は冬に飲む麦のお湯割りに匹敵します。
 人生を他人のために切り売りしてやりたくないことをするという点に目をつぶれば、会社員は最強の生き方です。
 目をつぶれなかったのでゴールデンウィークを目前に俺は思いました。
 なんか他に収入源・コミュニティをつくらねば。

 当時のLINE履歴が機種変により吹き飛んでいるため正確なやりとりは俺には不明なのですが、10niesさんがもっと定期的に記事を投稿してほしいとメンバーに言ったのが始まりだと記憶してます。
 だったら個人的なモチベーションに頼るより、報酬チラつかせた方がみんな書くんじゃね。
 そう思った俺は10niesさんに同人イベントで小文化の同人誌を売ろうと提案します。この発想の根っこに上述の焦りがあったわけです。でも一番の理由はおもしろそうだったからですよ。

 言ってはみたもののマンガ以外の同人イベントって具体的にどこだよ。ググってヒットしたのが文学フリマでした。
 9月6日の大阪は準備が間に合わなさげだったので10niesさんと相談して11月22日の東京に申し込むことに。
 9月6日の文フリ大阪には単身突撃してきました。コミケしか知らない俺にとって、好きでもないFGOの薄い本ではなく、みんな自分の趣味を邁進した雑誌を出版していたのは印象的でした。
 この時点でまだ冊子の内容は決まっていなかったように思います。ただ個人的に「新堂エルを読んでみた」の改稿になるだろうとは思ってました。会社員なので輪番の原稿と並行して新作を書き下ろす余裕がなかったからです。あと自分史上一番バズったやつだし、文化人類学エロマンガという自分の2大テーマが入ってるし。
 その後の出版に至る流れは10niesさんの書いてる通りだと思います。

 ではここから、出来た冊子と出展してみたことの感想。
 冊子の制作はほぼ全て10niesさんが担当しました。俺たちは原稿書いて送って、slack上で好き勝手喋っただけ。当日知ったのですが、なんと表紙のデザインも10niesさんがPowerPointを使って作成したとのこと。

 ありがとうございました。お菓子食べた?

 出来た冊子は用紙をホチキス留めしただけの簡単なもの。ゼミ発表の原稿に毛が生えた程度といえば辛辣ですが、あれです、Minimum Viable Productってやつです。
 値段は200円としました。ペラペラすぎて最初は無料配布案も出て俺も一瞬賛成しましたが、やっぱり値段は価値に先立つと思いなおして、値段をつけてもらいました。
 会場に一番乗りして設営をしたのは俺ですが、つっても冊子を机において椅子を広げるだけ。秒で終わったので持ってきた紙で折り紙をしてマスコットキャラを作りました。

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小文化くん(製作時間一分、他会員未認可)

 どうでしょう、この行き当たりばったり感。初めてなんだから当然です。
 ていうか。今回の出展については、個人的にはブース取ってそこに冊子を置いたという事実を作った時点で勝ちだと思います。「2020年11月22日、文フリ東京にて初出展」って沿革に書けるんだから。それすらできないサークルなんてごまんとあるし。

 当日来てくれたのは、Twitterを見てくれた人、何となく来た人、会員の友達、こっちが買ったから来てくれた人。
 ほぼ確実にこのブログを読んだことのない人たちがやってきてくれ、そんな彼らに冊子を渡すことができました。大きな収穫です。
 ですが、小文化学会って何?という人たちにたいした自己紹介もないまま、小文化学会をよりよくするための議論から始まる冊子を売りつけるという不親切をやらかしてしまいました。

 親切な冊子、今後の課題でもあり当学会の永遠の課題です。
 この課題は、「興味のない人に興味を持ってもらうにはどうしたらいいか」という課題でもあります。
 俺たちの原稿がおもしろいのは純然たる事実ですが、それを短時間で伝えるにはどうしたらいいか。
 表紙にイラスト、ブースにポスター、もっと読みやすい冊子構成……。いろんな側面からの改善案はすでに他会員によって提示されているので、個人的な反省を1つ。
 もっと愛想よく座ってればよかった。
 脚組んでるやつがいるブースの冊子買おうとは思わんよな。
 居酒屋のキャッチまではいかなくても、積極的に冊子のセールスされるの俺も嫌だけど、最低限「よかったらどうぞ」とか「当サークルはこういう活動をしてて~」ぐらいの決まり文句は練習しとくべきでした。聞かれたら言うくらいの程度に。
 今回の出展の大きな収穫とはこうした他者の目を意識できるようになったことじゃないでしょうか。小文化では出来た原稿をブログにアップする前に会員間で査読し意見を言い合うシステムを採用しているのですが、他会員よりさらに遠い読者という他者を視認できるようになりました。
 次回の出展では彼らを視野に入れた雑誌作りをしていきたいと思います。
 お楽しみに。

 

【つおおつ】

 あれは今年の夏ぐらいだったと記憶しています。6月から始めた輪番制がきちんと回り始め、小学の活動の継続性が確保された頃、誰かから文フリ東京に参加し、小学としてなんかしらの冊子を頒布しようじゃないかという提案がなされました。
 私はかねてから、小学の今まで投稿してきた記事から、とりわけ意義深い記事を選んだベスト・セレクションを出そうじゃないかとこの提案の前から設立人である10niesさんに提案していたので、文フリに出そうという提案は大歓迎でした。
 冊子の形式もベスト・セレクションに決まり、文フリ東京参加が確定して、しばらくして飛行機を取りました。

 私は文フリのための決起集会が行われた11/21のさらに前日から江戸川区瑞江にある友人宅に泊まっていました。
 コロナ禍がひどくなっている札幌ですが、この素晴らしい小学の冊子の初頒布の現場に立ち会うことは有用有急にほかならないので、当然飛行機はキャンセルせず現地入り。
 11/21には決起集会が行われ、各人の近況報告と、明日の動きの説明がなされました。
 さて、当日の設営は2人までしか出来ないため、10niesさんとぽわとりぃぬさんに設営を任せ、私は12時を少し過ぎたころに会場入り。
 10niesさんとぽわとりぃぬさんに挨拶して、一緒にお客さんを待ったり、ブースを巡ったりしていました。
 事前にLINEで在京のこういった活動に興味のありそうな友達にメッセージを送っていたんですが(5人程)、そのうち何人かが来てくださいました!大感謝!

 友達が帰ったあと、他の人がどんなものを出しているか気になってブース巡り開始。

 

 名古屋にある歌人が集まる中華料理屋を詠った短歌集、日本語ヒップホップの考察、圧倒的文献を紐解いて詳らかにした少女の発達の過程、新聞の流通経路の調査集、広島のストリップ劇場の復活譚、etc......。


 ダイヤモンドよりも堅いと言われるつおおつの財布の紐が一瞬で緩み、気がついたら1万円使っていました……。だって図書館で手に入らないんだもの。

 

 他ブースを巡り小学のブースに戻ってくる、ということを何回か繰り返していると、ぽわとりぃぬさんが戻ってきた私に向かって一言。
 「NHKにようこその滝本さんが出店してるらしいですよ、ほら、あそこです」
 指差した先には、あの『超人伝説』やツイッターでおなじみの顔が。私は小学6年生の頃にNHKにようこそを読み、それ以降滝本竜彦の大ファンであります。


 その御方と同じ会場に参加できているなんて……!それだけで感激の極みですが、やはり話しかけたいもの。冷静になるためにエチゴニアさんとブース巡りをもう一周して(ビビリ)、勇気を出して小学の冊子を持って滝本先生のブースに行きました。


 小学6年生から滝本先生の大ファンであること、新刊のライトノベルは完全に理解することが出来なかったが温かい気持ちになれたことを伝えてから、なんと購入した『NHKにようこそ』にサインを頂くことができました!
 そして、勇気を出して「オールジャンルでマイナーなことかマイナーな手法を用いた考察しているサークルをしています。良かったら読んでください。」と小学の冊子を渡しました。
 「面白い活動をしてらっしゃるんですね」と受け取って貰えました……感激!
 今回文フリに出し創作側としての立場をはっきりさせたことで、創作者として憧れの滝本先生と同じ立場になり、冊子を受けとって貰えたと前向きに捉えておこうと思います。

 

 その後も色んなブースを巡り(特に新聞流通について研究されてる方とは沢山話させて頂きました)、楽しい一時を過ごすことができました。

 

 さて、決起集会と同様、打ち上げもサイゼリヤです。東京流通センターから最寄りのサイゼリヤまでは歩いて30分程。10分くらい歩いた所で同じ文フリの参加者と思しき人は一人も周りにいなくなりました。でも気にしない。そこにサイゼがあるから。

 ミラノ風ドリアとペペロンチーノを両方頼んで、お酒とティラミスを食べても1500円くらいだったと記憶しています。最後はエチゴニアさんが持ってきたボードゲームをプレイして楽しい打ち上げになりました。

 

 他の人の文フリ参加の感想を読んで思ったのは2つ。1つは文フリにかける思いは十人十色であること。まとまっておりません。でもそれでいいのです。一つにならないまま集うこと、それが小学の目標でありますから。
 もう1つは当会が極めてお金のかからないサークルであること。このサイゼへの固執はもはや病的であるかもしれません。しかしこれが小学なのです。

 みなさんも小学に興味を持ったらぜひ入会・寄稿などして下さると幸いです。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『小文化』創刊号の編集後記でも書きましたが今回の文学フリマを単なる「思い出」にしないためにも、次回の即売会参加を目標に活動を継続します。引き続き月2回更新していくつもりなので、よろしくお願いします。参加・記事の寄稿も引き続きお待ちしております。興味がある方は、お気軽に連絡していただければ幸いです。それでは。

 

 

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