小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

地方で資金調達をしてスタートアップを始めるための前提条件についての一考察 ~実例と共に~

どうも、つおおつです。

 『小文化』2巻にも書いた通りですが、去年12月に私がやっている会社である株式会社あるやうむが資金調達をし、自分のペースでのんびりやれるスモールビジネスから色んなステークホルダーを巻き込みつつ急成長を目指すスタートアップへと変化*1しました。

 

 さて、前のスタートアップ雑感記事にも書いた通りですが、私は札幌、ひいては首都圏以外の起業文化が盛んになるべく、札幌を始めとした地方でスタートアップをやろうとする人がベンチャーキャピタル(通称VC、初期のスタートアップに資金援助をし株式またはトークンを取得することにより、大化けした時に売却益を得ることを目的とした会社)から資金調達をできるように手弁当でお手伝いをさせてもらっており、その過程で地方でスタートアップをやるための前提条件(事業領域や創業メンバー等)に気づいたので本記事で整理させていただければ幸いです。

 

 はじめにお断りしておくと、下記前提条件の3~4種類に当てはまっていればおそらく出資を受けることができるので、必ず当てはまっている必要はありません*2

 

 

地方スタートアップの前提条件(事業領域や創業メンバー等)

 

1.近年にわかに流行し始めた事業領域であること

 既存の事業領域でうまく行っているプレイヤーは、新しい事業領域について勉強するインセンティブが働きません。最近ブームになった事業領域であればあるほど、既存の事業領域でうまく行っているプレイヤーはそれに追いつけません。東京と地方のスタートアップ(およびスタートアップ気質がある人達)を比べた時、東京の方が地方に比べスタートアップエコシステムが確立している分だけ、既にある程度勝ちパターンが見えている領域(去年までのSaaS領域のような)で起業する傾向が強くなると思われます。その前提に立つとするならば、近年にわかに流行し始めた事業領域においては、投資家サイドの投資需要に対して起業家の供給が東京の起業家だけでは追いつかない可能性が、流行してある程度(数年)経過した事業領域に比べて高いと思われます。

 従って、スタートアップの王道的な事業領域で起業するのではなく、近年にわかに流行し始めた事業領域で起業をするのが、地方スタートアップでも出資を受けるコツであると考えます。

2.代表・創業メンバーが若い(30歳未満)

 プレシード(起業家がアイデアしか持っていない段階)・シード(起業家がプロトタイプを完成させてわずかな売上を計上した段階)の段階で投資する投資家は、投資した起業家が、投資家が提供する経験知・人脈によりビジネスの成功確率を上げることを期待して投資をしています。

 その時に一番成功確率が上がりやすい(つまり、投資前と投資後の成功確率の差分が大きい)のが、代表や創業メンバーが若い起業家である、と考える投資家が多いです。従って、なるべく若いメンバーで起業をするのが地方スタートアップでも出資を受けるコツであると考えます*3

3.顧客が東京から遠い事業領域である

 一般的な傾向として、起業家は都会(≒東京)に住みたがります。オフラインによる起業家や投資家間の情報交換の場が日本で一番行われる場所は東京であり、これだけオンラインの交流の機会が発達した現代においても、その場を重視する起業家が多いからです。一方で、スタートアップが提供する商品を欲しがる顧客が、全て東京に立地しているわけではありません。特に一次産業従事者が必要とするサービスを提供する場合、顧客は東京から遠いため、事業のアイデアに気付く起業家が、東京に顧客が多い事業領域に比べて、少ない可能性が高いです。そういった事業領域の場合は、そうでない事業領域に比べて、地方にいながら出資を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

4.投機性がある事業領域であること

 投機性がある事業領域の場合、投機に失敗したユーザーからサービス提供者への誹謗中傷や規制が複雑になることが多いため、起業家の事業領域選択において避けられる傾向が強いと言えるでしょう。一方で、投機性の高い事業領域は儲かる事業領域でもあるため、出資を受けやすく、地方にいながら出資を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

5.在京のスタートアップ起業家から見て事業領域として名誉に思われにくいもの

 これは先程の「投機性がある事業領域」に近いかもしれませんが、起業家も人間ですので、人に(特に自分の所属する準拠集団から)褒められたいものです。そのため一般的に不名誉とされる事業領域や賢い人がやりたがらなそうな事業領域*4かつ儲かる事業領域の場合、地方にいながら出資を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

6.創業メンバーに、その事業領域でその地方のコンテンツを利活用した実績が過去にあること

 その地方で創業する時、なぜ東京で創業しないの?となりますが、創業メンバーが過去にその事業領域や近い領域でその地方のコンテンツを利活用して目立っていた場合、採用や情報発信・PR・マーケティングにおいて有利と投資家から思われやすいため、地方にいながら出資を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

7.代表・創業メンバーに女性がいること

 女性起業家は有標性が高いため話題になりやすく、また賃金水準が一般的に低いとされる女性を採用しやすい(とされている、因果関係は不明)ため採用活動を有利に進められるので、地方にいながら出資を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

 

前提条件に基づく地方スタートアップの具体例

 そろそろ疲れてきてしまったので、会社名と何に当てはまるとつおおつが判断したのかだけ列挙させて頂ければ幸いです。

1.株式会社Zenesis(札幌市中央区

prtimes.jp

 VR×NFTという投機性をはらんだ炎上しやすい事業領域、創業メンバーはかつてV雪(バーチャル雪まつり)というメタバース×札幌雪まつりのイベントで法人ではない有志イベントとして最多ののべ4万人の動員数を記録したイベントを実施。本記事の条件の1,2,4,5,6に該当。

 

2.株式会社Fant(北海道音更町)

initial.inc

 ハンター向けのポータルサイトを提供、本記事の条件の3,5,7に該当。

 

3.株式会社雨風太陽(旧社名:株式会社ポケットマルシェ,岩手県花巻市)

prtimes.jp

 全国の農家や漁師などの生産者と消費者を直接繋ぐアプリ「ポケットマルシェ」を運営する。本記事の条件の3,5に該当*5

 

4.株式会社あるやうむ

alyawmu.com

 ふるさと納税の返礼品としてNFTを採用するためのソリューションを自治体向けに提供。本記事の条件の1,2,3,4,5,6に該当

 

 ここまでお読み頂きありがとうございました。ここまで読むと、じゃあ何の事業領域がいいの?と思われる方も多いかもしれません。詳細な理由説明は別の記事でしたいですが、地方にてスキルのない学生がスタートアップで起業を行う場合、Web3(NFTおよび暗号資産の利活用)領域が一番いいと思っております。それでは、またお会いしましょう~~~。

 

*1:あえて変化という表現を使っているのは、スモールビジネスとスタートアップに優劣をつけたくないからです。

*2:同様に、これにすべて当てはまっているからといって出資が受けられるわけではないと思います

*3:これは東京/地方にかぎらず同じことが言えるので、スタートアップをやるなら若いうち、というのが正解かもしれません

*4:スタートアップ起業家は一般的な人よりは賢いと思われ、賢い人が所属する準拠集団とそこまでずれていないと思われる

*5:失礼のないように加筆しておくと、一次産業に携わることが不名誉なのではなく、あくまでスタートアップ起業家が所属する準拠集団の中で一次産業系が華々しく思われにくいというだけです