小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

白ポストの中身が知りたくて――

 ポストといえば白だ。誰がなんといっても白。私のクオリアイカれたわけではない。実際に白いポストはある。送る言葉ではなく唾棄すべき(と誰かが断定した)言葉を入れる、有害図書追放のために設置された通称「白ポスト」。

 白ポストは1950年代後半から盛んになった悪書追放運動の一環で、1960年代前半に尼崎市に設けられたのが最初とされている。以降、自治体や市民団体が各地でどんどん増やしていった。ここらへんの詳しい経緯はWikipediaWikiが参照した文献にあたってほしい。本稿の関心は白ポスト白ポストでも、その中身だ。

 中身を知りたければ、素直に管理団体へ問い合わせると同行できるらしい*1。回収数が増えている地域もあるようだが、インターネットという電子の大海が拡がる現状を鑑みると、一般的には利用数は減っているだろう。先の注釈の記事では、ゴミも捨てられているという。

 開けずに内部を見たいなら、本物の目ではなく機械の目に頼ることもできる。持っててよかったスマートフォン。あたりまえですが撮影しただけで当初の目的以外の使用はしていないし、中身をいじくるなんてこともしておりません。

ケース①

 さっそくいってみよう。どういう順番でもよいのだが、撮影した順に紹介していく。

 トップバッターは滋賀県内の駅前にある白ポストだ。駅は人が集まる場所なので、定番の設置箇所となっている。

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筆者撮影。撮影日:2017年5月5日

 パッと見て肌色が多く、いかにも白ポストの中身って感じがする。目立っているのは『スーパー・ポーズブック』という肉体を写実的に描く際の資料となる書籍2冊である。Amazonによると高評価を得ている。どういう評価なのかはさておき……。

 写真から分かる本は『セブ物語―高橋生建写真集』がある。調べたかぎりヌード写真集。白ポストに投函されるのは妥当な1冊といえよう。上のポーズ集とともに、当初の想定とはややズレている気もするけど。

 書名は分からないが確認できるのは、雑誌が1冊と(推定)ヌード写真集が1冊。ここは市街地から離れた駅だったが、じゅうぶん機能しているポストだった。

 

ケース②

 お次も滋賀県内のポスト。場所は失念してしまったが、たぶんケース①よりは都市部の駅前あたりだった気がする。

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筆者撮影。撮影日:2017年7月31日

 雑誌が3,4冊入っていた。筆者の無知ゆえに、いままで聞いたことのない雑誌ばかりだった。『まんがシャワー』は2019年に休刊したらしい。広告も表紙もドギツイオーラの放っている。背景が白だと余計に際立っている。あとはゴミ箱代わりに捨てられたと思われるティッシュとアイスの棒。夏を感じますね。

 

ケース③

 兵庫県の駅構内でも白ポストを見つけた。年季が入ってそうな見た目。ちなみに前2件のポスト外観を撮らなかったのは、典型的な形状だったからだ。これもそうなんですけどね。見えにくいけど側面には三ない運動という懐かしい言葉が記されている。もはや無言の歴史の語り部とさえいえそうだ。

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筆者撮影。撮影日:2017年8月3日

 で、中身がこちら。

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筆者撮影。撮影日:2017年8月3日

 駅コンコースのブースに置かれたSUUMOムックと新聞。これは完全にゴミ箱である。持ち家と新聞は有害という強い思想の線は否めないが、にしてもエロもグロも白ポストのなかにはまったくない。あまり面白くない内容だった。

 

ケース④

 これも西宮市内にある白ポスト。青少年補導グループと青少年補導センターの違いってなんやねん。

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筆者撮影。撮影日:2017年8月3日

 中身は意外なものだった。ぼやけており、見えづらくて申し訳ない。

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筆者撮影。撮影日:2017年8月3日

 英語のプリントだ。詳細は不明だが、中学校の内容のようだ。青少年に有害なものが捨てられる白ポストへ教材が放り込まれるのは、なんとも皮肉な話だ。児童にとっては、楽しい日々にとって勉強が有害な存在になっているのだろうか。分からなくもない。

 

ケース⑤

 今度は福井県。これも駅のなかに設置されている白ポストだ。設置者は社会奉仕団体であるライオンズクラブ有害図書を入れるとポストが感謝してくれる。

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筆者撮影。撮影日:2018年4月20日

 中には無関係なチラシとともに、マンガが単行本と雑誌の各1冊ずつ入っていた。

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筆者撮影。撮影日:2018年4月20日

 一番上にあるマンガはIronsugar著の『初めての相手はお父さんでした! 【下巻】』。上巻はまだ捨てた人が持っているのだろうか。

www.getchu.com

 その下にあるのは『漫画時代劇Vol.7』。硬派なようにみえるが、当号の表紙を見るに官能的な作品もあるようだ。成年コミック雑誌の源流にあたる劇画の流れを汲んでいるのかもしれない。個人的には京都府内配布と思われるチラシが紛れ込んでいるのが興味深い。なんで福井で捨てたのでしょうか。

 

ケース⑥

 名残惜しいが最後の白ポストだ。場所は富山県。こちらもローカル線の駅前にある。他のポストよりも特徴的な形をしている。ここに入れろといわんばかりの矢印、県名産のチューリップ。中身が気になってくる。

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筆者撮影。撮影日:2018年4月22日

 で、入っていたのは雑誌と写真集。

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筆者撮影。撮影日:2018年4月22日

 一般向けなのは『宣伝会議』と『週刊文春』。新聞は富山新聞だろうか。漫画雑誌は『週刊漫画TIMES』。芳文社から発刊されている青年向け(NOT成年向け)。最近の有名な作品だと『妻、小学生になる。』とかがあるらしい。有害図書の範疇に入りそうなのは『熟女クラブ写真集PART5』ぐらいだ。確かに、若者には熟女よりもうちょっと下の年齢層のほうが合っているかもしれない。

 

 今回は数ヶ所の白ポストの中身を覗いてみた。予想より使用されていると筆者は感じた。まあ、有害図書を排除するというより、普通に捨てるのが恥ずかしくてひっそり廃棄したい人向けのエロ専用回収ボックスが、実際の立ち位置に近いだろう。それもアリと思う。本来の用途以外で役に立っているものは世の中にたくさんある。有害図書の処理場ではなく、人の欲求を受け容れる社会のアジールとして、白ポストがこれからも街の片隅にあらんことを。