小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

ゆめアールは無いけど花寺のどかの幻覚を見た

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図1 ゆめアール(イメージ)*1

 

 みなさんは3月20日に公開された『映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』を何回見ただろうか。たいして劇場に足を運んでいないのに、本作について記事を書くのは非常におこがましいと承知しつつ、備忘録がてら鑑賞して思ったよしなしごとをまとめておきたい。なお本編についての記述を含むが、その旨ご理解いただくよう、あらかじめ述べておく。

目次

1.作品紹介・映画のあらすじ

 未視聴の方もみえるだろうし、簡単にヒーリングっど♥プリキュア(以下ヒープリ)の作品や登場人物の紹介をしておこう。地球を密かに癒してきたヒーリングガーデンは、ビョーゲンズと称される襲撃を受けて壊滅的なダメージを受けた。これにより地球も人類の素知らぬあいだに危機を迎える。

 ビョーゲンズに立ちむかうべく、ヒーリングガーデンの「地球のお医者さん見習い」であるラビリン・ペギタン・ニャトランがプリキュアに変身するパートナーを探し、ラビリンは花寺のどか、ペギタンは沢泉ちゆ、ニャトランは平光ひなたと出会う。そして、のどかはキュアグレース、ちゆはキュアフォンテーヌ、ひなたはキュアスパークルに変身。ヒーリングガーデンの幼き王女であるラテは、のちに風鈴アスミのパートナーとなり、アスミはキュアアースとして加勢した。ちなみにアスミの存在はテアティーヌというラテのお母さん、つまり女王の気持ちに地球が応えた結果なので、人間ではなく「精霊のようなもの」だそう。キラやば~。

 早口で言ってそうな説明だけでは分かりにくいので、画像であらためて紹介しよう(図2‐5)。

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図2 キュアグレース(右)とラビリン(左)

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図3 キュアフォンテーヌ(左)とペギタン(右)

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図4 キュアスパークル(右)とニャトラン(左)

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図5 キュアアース(右)とラテ(左)

 あと、変身前も載せておく(図6)。

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図6 ブラシを持っているのがちゆ。薄い青色のワンピースを持っているのがひなた。

ハンガーにかかった服を持っているのがのどか。ラテを抱えているのがアスミ*2

 映画のあらすじは以下のとおり。ヒープリのメンバー4人はのどかの母親やすこの引率で、東京へ遊びに来た。本編内の季節は秋*3。目的は東京で催されている夢を具現化する技術、「ゆめアール」によるアトラクションを体験するため。ゆめアールシステムに必要なゆめペンダントを生みだした我集院サレナ博士の娘、カグヤと偶然出会ったのどかたちは、カグヤ出演のゆめアールによるイベントへ乱入した謎の敵、エゴエゴを捕えるべく、協力することになるのだが……ここから先は、劇場で確認しましょう。カグヤがどんな子かはこの記事を最後まで読むと分かるよ。

 わざわざ予告編でも「私たちヒーリングっど♥プリキュア、東京に来たよ~!」と言っているぐらい*4、今回の映画は東京が舞台であることをゴリ押している。意外と思われるかもしれないが、プリキュアシリーズは実在する場所が舞台になることはあまりなく、管見の限りでは横浜、パリ、沖縄、あとは『スマイルプリキュア!』の第30話で訪れた九份(台湾)やニューヨーク、万里の長城に留まる*5。都内でも渋谷区は、区の観光協会が制作に協力し、特に序盤では区内各地が登場する。

 さっそく舞台を調べてみました! といきたいところだが、実はパンフレットのほうで本作の「聖地」が「東京おでかけMAP」としてマッピングされており、おおまかな場所は公式がすでに教えてくれている。じゃあなんも書くことない? とはいえ一寸のはてなブログにも五分の魂。渋谷に場所を絞り、詳しく見てみたい。

2.渋谷周辺の舞台となったスポット

 パンフレットで「渋谷駅周辺」として紹介されているのは、以下の地区・店舗。

・ハチ公前

スクランブル交差点

・SHIBUYA109渋谷店

・MIYASHITA PARK(旧宮下公園)

・竹下通り

・並木通り

 近隣では国立競技場と神宮外苑イチョウ並木にもキャラクターは訪れているが、それらは周辺という扱いは受けていない。事実、それほど近いわけではないので違和感はない*6。本編でのどかたちが訪れた順にたどってみよう。

並木通り

 新幹線で東京駅に着いたのどかたちは、そこでゆめペンダントをもらい、さっそくゆめアールを体験する。そののち、やすこと別れて並木通りのオープンテラスにてお茶で一息ついた。並木通りと聞いてもピンとこない方も、写真を見れば分かるはずだ。

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図7 神宮前交差点近くから原宿方面の道へ(4月12日撮影)

 分かるはずとか言いながら分かりにくい。要するに、ここは渋谷ではなく表参道として知られるエリア。東京駅からだと、JR山手線を使って原宿まで行ったのかなと想像できる。ちなみに「並木」はケヤキのことで、当然ながらケヤキが植えられた街路を指す。具体的には表参道交差点(青山方面)から神宮橋交差点(原宿方面)までだ。

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図8 ちょうど1㎞ぐらいっぽい。Googleマップより2021年4月25日取得

 ここでひとつ指摘しておきたいのは、表参道オープンテラス少なすぎ問題だ。地図と実地での調査によると、路面で屋外に飲食スペースが設けられた喫茶店は、「ゼルコヴァ」という表参道交差点にほど近い店舗のみだった。映画の背景と店構えがまったく異なるのは、チェーンじゃない店だし許可とかめんどいだろうからそうだなという感じだが、それはさておき表参道にオープンテラスがほぼないのには驚いてしまった。喫茶店はたくさんあるがどれひとつとってもパラソルの影も形もない。表参道とオープンテラスはイメージとして簡単に結びつけられるので、個人的に意外だった。確かに人が多いんでオープンテラスは難しいってのはある。

 個人的にはわざわざお茶をするために原宿駅から並木通りの東端まで歩くかな、と首を傾げたくなるが、ひととおり歩いて疲れちゃったのかもしれない*7。ともかく、お茶をしている最中、突然ラテがカグヤの存在に感づき、原宿方面へ走り去ってしまう。

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図9 唐突な東急プラザ表参道原宿。映画本編で2カット出てきた(同上日撮影)

 なんで原宿方面へ走ったと分かるのか? それはラテを追いかけたのどかたちが、神宮橋交差点で見失ったと慌てるシーンが挿しはさまれているからである(図10)。ただ、図9の神宮前交差点にある東急プラザを通り過ぎたシーンはないので、オープンテラスの喫茶店がその以東と以西のどちらにあるのかは不明なままだ。

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図10 見失っちゃったじゃーん! みたいなことをひなたが言っていた気がする

(同上日撮影)

 映画では、ひなたとのどかが原宿駅方面(上図の左手)、ちゆとアスミが表参道(上図の右手)に分かれてラテを探した。ただ、次々と変わるカットでちゆとアスミが竹下通りにいる場面が映されるので、各員が原宿周辺を右往左往したという感じなんだろう。

竹下通り

 ちゆとアスミの場面で出てきた店舗にフォーカスを当てる。パンフレットには「ここはカラフルなキャンディショップなんだ」とある。2人が店内を探したわけではなく、探している2人を店内奥から覗いているアングルとしてキャンディショップが出てきた。さて、竹下通りにはトッティキャンディファクトリーとキャンディ・ア・ゴーゴー原宿本店の2店が、飴の専門店として店を構えている*8。これも既述の喫茶店同様、許諾を取ってそっくりそのまま描写したわけではないと推測できる。理由を以下で述べる。

 まず、どちらをモデルとしたかはだいたいの検討がつく。映画では通りと地続きの1階から覗きこんでおり、2階にある前者は当てはまらない(図11)。

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図11 右手の黒い手すりの階段のある建物の2階、ピンクと白の外壁が

トッティキャンディファクトリー。ちなみに、ラビリンたちがラテを

捜しているカットで一瞬写っている。Googleマップより2021年4月25日取得

 そのため、モデルはキャンディ・ア・ゴーゴー原宿本店と思われる(図12)。ただ、ここで新たな疑問が生じる。店内からのアングルであることはすでに述べたとおりで、想像がつくように向かい側の建造物が写りこむ形となる。しかし、見たところどうも実際に対面する建物とは違うのだ。

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図12 写真右手の店舗。「カラフルなキャンディショップ」であることが窺える

(同上日撮影)

  ひとまず、向かいあう建物を掲載しておこう(図13)。作中の画像を用いて比較できないのでもどかしいが、映画ではキャンディ・ア・ゴーゴー原宿本店が入居するキュートキューブ原宿に類似したものとなっていた*9。映画では幌や段差が描写されていなかったので、実際に対面する建物ではないのは明白だ。

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図13 キャンディ・ア・ゴーゴー原宿本店の向かい側にある雑居ビル

(同上日撮影)

 なぜ、実態とそぐわない背景になっているのか。推測に推測を重ねると、キュートキューブ原宿やそこに入居する店舗が、視聴者に見せたい原宿の景観やその構成要素を簡潔に伝えるのにうってつけだったからと考えられる。原宿は多岐にわたる個性的な店が凝集していることが、おそらく最大の魅力のはずだ。なので、そういった店を背景として見せるのが最良ではある。しかし、背景として描くのは手間がかかるし、「原宿」だとスムーズに理解してもらうために、そういった風景を1枚の画像へ落としこむのはかなりの労力がいると思われる。特に、プリキュアが想定する年齢層の児童に対しては、原宿の文化に含まれる雑多なコンポーネントのなかで、適切なものを選別する作業が入る。そうした諸々の都合を加味すると、落としどころとしてキャンディショップと、単一の建築物として提示できるキュートキューブ原宿が選ばれたのだ。

 劇中のキャンディショップと対面する建物が、キュートキューブ原宿と推測するのにはさらに理由がある。それは、当施設が原宿の文化を前提としているからだ。その姿勢はニュースリリースからも読みとれる。

「CUTE CUBE」とは、“女の子の「カワイイ」がたくさん詰まった宝箱”という意味。原宿の「カワイイ」パワーを集め、そのパワーを世界に発信していく場所になりたいという意味が込められています。……原宿・竹下通りは、日本のティーンが憧れるファッションの聖地であるだけでなく、今では「カワイイ」カルチャーの発信地として世界中から注目を集める場所です。……本施設は、かわいいモノ、わくわくするコトがたくさん集まり、そしてそれを楽しむ女の子たちが自然と集まる場所でありたい、また、彼女たちの溢れるパワーを世界中に発信できる場所になりたいと考えております。

                      (三菱商事都市開発 2013)

 当然、こうしたコンセプトは単なる背景として描かれただけでは分からない。そもそも劇中の一コマで確定できるほど、正確に描かれているわけでもない。しかし、以上の背景をもった建物と推定できるという営為が成り立つことは、製作者や協力した行政に近しい立場が適切だろうと考える原宿のイメージの伝達に成功している証左になる。「考えすぎ」と切り捨てるのは容易だが、以上のモデルに関する推論が正しいとすれば、鑑賞する人の多くは矛盾する風景を「原宿」として受容する。それは誰の落ち度でもなく、「原宿」イメージのエンコーディング*10がうまくデコーディング*11されたということなのだ。

のどかとカグヤの出会いの地、ガード下

 つまらない脱線が過ぎた。本編に戻ろう。のどかはカグヤと出会ったラテをガード下で見つけ、カグヤに謝意を告げる。個人的に、このガード下がいちばん頭を悩ませる部分だった。つまり、場所はどこなのか、とその場所に比定してよいのか、という2つの疑問がもたげた。

 まず、ガード下のおおまかな特徴としては1.見たところレンガでできている2.中央分離帯がある3.片側2車線の計4車線というのが挙げられる。近辺の地上を走る線路はJRのみであり、のどかたちは原宿周辺で捜索していたので、おのずとガード下の所在地も絞られる。とりあえず候補となる場所をマッピングしてみる(図14)。

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図14 赤字の丸囲み数字が候補。

Googleマップより取得(取得日 2021年4月25日)の地図を加工

 結論からいうと、先の特徴に合致するのは⑤しかない。①の国道246号線は車線が多すぎる。②~④はコンクリート等、レンガ以外の素材で造られている。宮下公園から原宿駅明治神宮沿いを走る部分はそもそもガード下がない。よって、北参道交差点近くの⑤が必然的にのどかとカグヤが出会った場所に特定できる。

 が、図14を見てすぐに抱く疑念があるはずだ。⑤、渋谷から離れすぎじゃね。どうも合点がいかない。ロケーションスポットを渋谷周辺に限定するならば、北参道付近の風景が採用されるのかについては、ちょっと肯定しがたい*12。原宿からは実質1駅だし、ラテを捜していたのならば、それぐらいは見て回るというのは分かる。だが、このあとのどかたちは渋谷駅周辺に戻っている。電車を使った、歩いた……理由付けはどうとでもなるが、ちょっと動線として腑に落ちない。そこまで足を伸ばすのかなとは、どうしても思ってしまう。ただ、風景として原宿周辺でいちばんそぐうのが⑤なのは確かだ。個人的には、のどかとカグヤ、そしてラテのガード下のシーンの直前、引きで写されたガード下は図14だと②のものに近いと感じた。とはいえ、あくまで主観なので皆さんの判断に委ねたい。

スクランブル交差点とMIYASHITA PARK

 ともあれ、ラテを見つけたのち、ヒープリの面々はスクランブル交差点を会場にした「ゆめアールの特別ショー」を観覧する。わざわざ提示するまでもないが、図15がスクランブル交差点です、はい。

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図15 ここ封鎖してショーやるって大変そうだなと思う。交通整理とか(同上日撮影)

 ショーの開幕中、冒頭のあらすじで触れたエゴエゴが暴れだし、ヒープリメンバーは一戦を交える。今回の映画の目玉の1つである、ゲスト出演のプリキュア5GoGo!のメンバーが現れたのは、図15の中央、SHIBUYA109渋谷店の屋上である。

 のどかたちは戦いを終えて、MIYASHITA PARKのベンチで一休みする。ちなみに図16は映画のカットで映ったアングルと近いところから撮った1枚。B1出口付近がたぶんうまく撮れるよ。

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図16 宮下公園交差点にて(同上日撮影)

 ひなたとアスミが座っていたのは図17のベンチ。ここで座っていると、図18の歩行者専用のガード下から映画みたいにカグヤちゃんが来るかもしれない。あなたの夢のつぼみが大きいと、東京から出ていったほうがいいって言われます。

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図17 残念ながら現在は映画のワンシーンを再現できない。

新型コロナウィルスの影響をこんな形で受けるとは(同上日撮影)

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図18 ここからカグヤが現れた(同上日撮影)

 のどかたちが東京に訪れた初日はこうして幕を閉じる。あとは渋谷近辺だと、2日目のカグヤとヒープリメンバーが集合したハチ公があるが、そこは集合したというだけだし、何より提示するまでもない有名所なので省略する。それいうと全部そうっちゃそうか。許してください。

3.映画についてのコメント

 ここで締めくくってもいいが、コメントのようなものを少しばかり残そうかと思う。今回の映画は実質的な秋映画で、なかなかスケジュールどおりに進まなかったヒープリの面々と、本放送終了後に再会できたことがまずよかったし、映画の内容もすごくおもしろかった。そのうえで、ちょっと気になった点がある。本編に沿って述べていきたい。

キュアスパークルのセリフ

 非常に些末なことだが、エゴエゴとの初戦でキュアスパークルが分身したエゴエゴのうちの2体を相手にした際、1体を取り逃したのを「外しちゃった」と言っていた。しかし、シーンを見るかぎりスパークルの技「プリキュア・ヒーリングフラッシュ」の電流は1体のみを狙っている。四方八方に散らばるのではなく、帯状の電流を1ヶ所に飛ばすタイプの攻撃なので、ちょっと違和感を抱いた。本編では2つに分かれている気がしなくもないが、エゴエゴにヒットしたシーンで他の電撃はみられなかったし……まあ、ここはそんなに深入りしないでおく。

カグヤの誕生日

 2点目はカグヤの誕生日について。最初に、のどかたちの東京滞在について簡潔に整理する。

1日目:東京駅着。ゆめペンダントをもらう。カグヤと出会う

    プリキュア5 GoGo!と共闘。お台場のホテル*13

2日目:渋谷で待ち合わせ。カグヤの案内で東京観光。明日がカグヤの誕生日だと知る

    ハチ公前→国立競技場→井の頭公園(映画のシーンで確認できたもののみ)

3日目:カグヤの誕生日。みんなでランチやショッピング

    帰宅後、カグヤはサレナとエゴエゴの結託を知る

    自宅兼研究所を飛びだしたカグヤとヒープリが合流

    サレナを裏切ったエゴエゴを浄化する

4日目:みんなでカグヤのお誕生日会(エンディングの終わりに静止画として表示)

 作中で、カグヤの誕生日については2度の具体的な言及がある。1度目は国立競技場の帰り道、神宮外苑イチョウ並木でカグヤ自身が「明日が私の誕生日だってことを、お母さん(サレナ)は忘れてるっぽい」と言及しているシーン。2度目はカグヤと共に、カグヤの自宅でサレナと対峙したヒープリが、サレナから「明日の14歳の誕生日まで、カグヤは生きられない」というシーンだ。

 上記の整理と照合すると、1度目は2日目、2度目は3日目の発言である。つまり、発言をそのまま受け取ると、カグヤの誕生日がいつなのか確定できなくなってしまう。おそらく制作陣はこの点に気付いており、パンフレットの「ストーリー」では「明日がカグヤの誕生日だと知ったみんなは、のどかの提案でプレゼントを探しにショッピングにも行ったよ」という記述ののちに、「明日はサレナ博士も呼んでお誕生日会を開こう。のどかたちと約束してカグヤが家に帰ると……」という文章が続く。これを読むかぎりでは、発言はあたかも矛盾していないようにみえる。

 しかし、2日目のイチョウ並木を歩いている際、のどかはカグヤに「明日しない? お誕生日会」と提案し、ヒープリのメンバーとカグヤが食事をしたり、買い物をしたりするパートへ移る。発言ですでに明らかとなっているが、シーンでも食事を囲んでいるのは夜ではなく、陽の色の濃度が夕方のそれとは異なるので、日を改めたと解釈するのが自然だろう。

 3日目の最後に訪れた井の頭公園は、陽の描写から夕刻であると推定される。ここでカグヤがサレナにのどかたちを紹介したいと提案し、サレナと暮らす自宅兼研究所へ帰る。すでに夜となったシーンで、カグヤは「明日、なんの日か憶えてる?」とサレナに問いかけている。そして以降のシーンで、サレナもヒープリのメンバーに「明日、14歳の――」という上掲の告白をする。発言を整合的に解釈するのは難しく、パンフレットではやむなく曖昧に書いたのだと思われる。

カグヤの年齢

 3点目はカグヤの年齢について。先に触れたサレナの発言からも分かるが、カグヤは作中の時間で14歳になる年、つまり中学2年生に相当し、アスミ以外のヒープリメンバー3名と同い年である。だが、作中に出てきた要素を鑑みると齟齬が生じる。

 カグヤの年齢に関連して、具体的な年月日が分かるものはたびたび登場する絵本『かぐや姫』である。この本の初版発行日は2011年9月22日と作中で確認でき、サレナが3歳の誕生日プレゼントとしてカグヤに贈ったものだということも分かる。

 また、神宮外苑イチョウ並木の紅葉もヒントとなる。背景として映えるから、という物語外の理由もあるだろうが、見たところピークを迎えているようだ。イチョウ並木の見頃は例年11月中旬から12月初旬で、つまり作中はそういう時期と推定できる。これがどのようにヒントになるのかというと、サレナの回想シーンで出てきた2007年10月という年月は、それ自体がカグヤの誕生日とは直接結びつかないことを明らかにしてくれる。先の絵本の初版発行日と合わせて考えると、カグヤはどんなに早くても2008年9月以降に生まれており*14、2007年はそれよりも前で、イチョウの紅葉と併せると、10月も無関係のようだ。

 仮にカグヤが2008年に生まれたとして、本映画がヒープリ本放映時と同じ2020年を舞台としているならば、12歳になるはずだ。だが、それではサレナの台詞と合致しない。仮に14歳というのが本当だとして、可能性としてありえるのは本作が2022年を舞台としているか、サレナが出会った時点でカグヤが2歳になる年だったかという2つが考えられる。後者は無理筋だとして、前者も本放映(ここではヒープリの2020年)の年と作中の年を合わせるという少女向けアニメの一般的な傾向から鑑みて、かなり強引な解釈だ。

 これはまったくの憶測だが、カグヤは初期設定の段階で12歳とされていたのではないだろうか。そうすれば作中の描写に抱く違和感は消える。また、そう考えるもうひとつの証拠は、個人差が生じるものだとはいえのどかたちと比べて露骨に低い身長だ(図18)。帰納的な物言いになってしまうが、プリキュアは同シリーズの同学年のキャラクター間でここまでの差はつけないので*15、もともとは同じ年齢ではなかったとすると、際立った身長差にも納得できる。では仮にそうだとすると、なんで急に変えたんだろうか。うーん、ゆめアールプリンセスとしてモデル活動してるから? でも小6でモデルやってる子なんてたくさんいるしな……へんにのどかたちと年齢差をつけると、タメ口での会話に対する違和感を抱かせてしまうとか。ちょっと分からない。

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図19 のどかとカグヤ(のどかの横にいるキャラクター)は同じ位置で並んでいる*16


 雑多になってしまったが、ここらへんで〆としたい。もしかすると本編の内容を誤解している部分があるかもしれないので、お気付きの方はご指摘いただけると幸いです。

謝辞

 草稿にコメントをくださったぽわとりぃぬ、LEDs両氏に謝意を申しあげます。

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参考文献・サイト

三菱商事都市開発株式会社, 2013, 『原宿・竹下通りに新ランドマークが誕生 名称は「CUTE CUBE HARAJUKU HARAJUKU HARAJUKU」 に決定! 2013年9月6日(金)開業』ニュースリリース

『「ヒーリングっど♥プリキュア」キュアグレース へんしんシーン』(https://www.youtube.com/watch?v=oxUf4APbhko&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月26日取得)

『「ヒーリングっど♥プリキュア」キュアフォンテーヌへんしんシーン』 (https://www.youtube.com/watch?v=_3-NIQ_6fhQ&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月26日取得)

『「ヒーリングっど♥プリキュア」キュアスパークルへんしんシーン』 (https://www.youtube.com/watch?v=w0H6ZXYIxQs&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月26日取得)

『「ヒーリングっど♥プリキュア」キュアアース へんしんシーン』 (https://www.youtube.com/watch?v=dOvorqPxui4&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月26日取得)

*1:Serial Experiments Lain 7話より

*2:『ヒーリングっど♥プリキュア』「作品情報」より。http://www.toei-anim.co.jp/tv/healingood_precure/info/, 2021年4月26日取得

*3:新型コロナウィルスの影響を受けて、本来は2020年春季に上映するはずだった前作の劇場版が同年秋季にずれこみ、秋に上映する予定の本作が今年の春季公開となったことによる。少女向けアニメは本放映と実際の季節はリンクするのが一般的で、本作も例外に漏れずそのようになっている

*4:『【特報】『映画ヒーリングっど❤︎プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』』https://www.youtube.com/watch?v=srBs-LBIPo4&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月20日取得

*5:台詞での言及を含めると鎌倉も含まれる。また、実在の場所を背景としたケースも確認されている

*6:竹下通りも並木通りも別個の最寄り駅はあるけど、相対的に近いし不自然とは感じない

*7:にしても、映画内でオープンテラスはおそらく北側の道路に面しているのに対し、「ゼルコヴァ」が面しているのは南側の道路なので、やはり比定するのは無理が生じる

*8:特定の飴を販売している店舗は他にもあるが、さまざまな種類の飴を幅広く取り扱っているのは提示したものに限られる

*9:実際の外壁はピンク調なのに対して、映画では白を基調としているなど細部は異なるが、大きくとられた窓や広めの入口は一致している

*10:送り手が種々のイメージを複合させて、伝えたいメッセージを表現すること

*11:受け手が受容したメッセージを解読すること

*12:いちおう⑤は渋谷区内にある

*13:パンフレットより

*14:カグヤは人間ではないので「生まれる」という表現が正しいかは不明だが

*15:もちろん全員同じというわけではないし、年長者がすべての年少者よりも高いわけでもない。あくまで現実と同様、バラバラな数値である

*16:『映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』本編映像一部解禁! https://www.youtube.com/watch?v=zKcOTyePC5k&ab_channel=%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E5%85%AC%E5%BC%8FYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB, 2021年4月25日取得