小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

受け流す力と地方都市 ー「うわっ…私の受け流し力、低すぎ…?」ー

どうも。つおおつです。

6/22(金)の小文化学会の新歓に来てくださった方、ありがとうございます。

無事に『NHKにようこそ!』の上映会をすることができました。

上映会は大体が静かにじっと見るというスタイルですが、

今回は要所要所で上映を止めて、そのキャラの発言などについて所感を語り合う、というスタイルで進行しました。

特に話が盛り上がったシーンを未視聴の方でもわかるように説明したいと思います。

この作品の主人公、「佐藤くん」はひきこもり。ひきこもりを救う方法を知っているという謎の美少女「岬ちゃん」が突如として現れました。色々あったのちに、岬ちゃんは佐藤くんに対して、

 

「会話の相手を自分よりダメ人間と想定することで、会話における緊張を減らす」

 

というアドバイスをします。

その後、佐藤君はアニメ・ゲームの専門学校の体験授業に参加し、授業中に自分の描いたゲームプランが教師に馬鹿にされたと思い込んでしまいます。その時教師が一言。

「君は自分と同じかそれ以下じゃないと、他人を認められないのかい?」

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  このシーンをきっかけに、新歓参加者の中で、日頃どのように考えてコミュニケーションをとっているかを話し合いました。最初の発言はある人の「岬ちゃんのアドバイスのような思考を僕はしている」というもの。その人に対して、「人はもともと違うんだから上とか下とか気にしなければよい。人にはいいところも悪いところもあるから、自分のいいところを見つめていられればよい」という意見も出ました。そこでつおおつは言いました。

 「馬鹿にされてもいいんじゃない、受け流す力があれば。そうやってうちは生きてきたし。でも、大津に来てから……」

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 つおおつは服に特に興味はありません。部屋に適当にある服を、上半身の服と下半身の服という組み合わせを特に考えることもなく適当に手にとって(硬い言い方をすれば上半身と下半身それぞれ独立に無作為抽出した服で)外出します。

 つおおつは高校時代までを東京の高田馬場近辺に住み渋谷にある中学・高校に通って過ごしました。上記の無作為抽出した服(独立に無作為抽出したので独立服とでも呼びましょうか)で、池袋パルコ・新宿伊勢丹・渋谷109なんでもござれと闊歩しておりました。友人たちには何かと突っ込まれることも多く、通行人から馬鹿にしたような視線を投げかけられることもありますが、つおおつは平気で受け流しておりました。むしろ「独立服程度で都会をうろつけるくらい都会民である自分」になんかしらのアイデンティティーを感じていたのかもしれません。*1

 時は過ぎ、つおおつは関西地方の大学に通うこととなり、滋賀県大津市中心部に下宿することにしました。かねてより興味のあった地方創生、地方暮らしを実感することが始まったのです。

 さて買い物に行きましょう。独立服に着替えてチャリを漕き始めるのはいつも通り。しかし向かうのは池袋や渋谷ではなく大津パルコ。そして、大津パルコに入ってキャンドゥで買い物するとき、"異変"が起こってしまいました。

 

 「あれ、なんか視線が刺さるんだけど…」

 

  東京生活で受け流せていたものが、なぜ大津で受け流すことができないのか。その為にはまず受け流すということの思考プロセスについて考えていきましょう。

 東京圏の人々というのは前途多難です。地元での就職が出来ず、或いはその地元じゃ自分というものが表現しきれないと思い込み、上京してきて、ブランドだけで家賃が上昇してしまったオシャレ系私鉄沿線に住み、そういう私鉄沿線のほうがより激しい通勤・通学地獄に巻き込まれて、なんとか東京にしがみついていく…(しかも大して給料が高いわけではない…

 もちろんこれだけで東京圏の人々すべてを描写できるわけがありませんが、四千万といわれる東京圏の人口の多数がなんとか東京圏にしがみついているということは言っていいと思います。

 つおおつからすれば、そういう人からの視線というのは、とてもとても受け流しやすいです。その人たちにはそういう人生のつらいところがあるわけですから。お互い様なわけですね。この「お互い様」の思考は、相手を自分と同じ土俵に持ってくるもので、岬ちゃんが佐藤くんにしたアドバイスと同方向に作用するものであります。

 

 一方滋賀県というのは東京圏の論理で19年間生きてきたつおおつにとっては恐ろしいくらいにリア充というか、大都市の持つ闇と全く無縁な場所であります。つおおつの家の近くには湖岸公園という、湖岸沿いに散策できるエリアがあるんですが、まずそこにいるのは、家族連れ、カップル、老夫婦、友達同士、etc....とにかく一人でいる人がいないのです!しかも、その人たちには都会のスレた感じが一切ない!他にも面白いのが、つおおつはよく大津にあるくら寿司に行くんですが、どんなに混雑したお昼時でもカウンター席は常に空いている!!!!!!!!!!(家族連れは基本テーブル席しかいかないため)なんておひとり様にとって過ごしやすい街!!!!!!!!!

 えー、取り乱しました。このようなつおおつの実体験はデータの面からも伺えます。

都道府県別にみた生涯未婚率では、東京が男女ともにトップ(男26.06%,女19.20%)の一方で、滋賀は男女ともにワースト2(男18.25%,女9.21%)。また都道府県別の生涯未婚率について扱った記事では、滋賀について以下のように描写していました*2

「三世代同居や、両親が近くに住む近居が多い。そのため、子育てがしやすいのではないか。他の県よりも若い世代が多く、高齢化率が低い。ほどほどの田舎である一方、県南部は大阪や京都への通勤圏。また、県民所得が高い。(人口1000人あたりの出生率)粗出生率は全国2位。なおかつ、地域で孤立しないような取り組みをしている」(滋賀県健康医療福祉部子ども・青少年局)

 京阪地区へのベッドタウンの地域もあり、かつ、琵琶湖を中心に自然環境も良い。「ほどほどの田舎」ということが、子育てのしやすさにつながり、婚姻率が高いことに影響しているのではないか。

 このような人々に対して、先述した「お互い様」の思考を働かせるのは、このつおおつにとってはなかなか難しく、その結果、大津パルコでの人々の視線が刺さるということが起こってしまったと思われます。

 自分の受け流す力を持ってすればどこでも生きていけるだろうと思っていたつおおつ。大津パルコに足を踏み入れて初めて気づくのです。

 

「うわっ…私の受け流し力、低すぎ…?」

 

 地方創生に興味があって、そのためには本当の地方を知らなきゃいかんだろと思ってわざわざ大学から少し離れた大津に下宿したつおおつですが、そこでわかったことは、少なくとも自分の受け流す力では、大都市のように多少闇を抱えた人がいる街じゃないと暮らしていけないということでした。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:ちなみに、大学の自己紹介で渋谷にある高校出身であるということを言った時そうみえない(見た目が)といわれたので、うちらにとって渋谷は庭やし、着飾るのは田舎もんくらいでしょwと言っておりました。いま振り返るとかわいいですね。

*2:

生涯未婚率の高い“おひとりさま”47都道府県ランキング | 文春オンライン

 より引用。生涯未婚率のデータも同記事より引用。