小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

恋愛しない若者たち ~カカフカカでわかる連帯結婚~

どうも。つおおつです。

 

 ついにアニメを定期的に見るという習慣がなくなってしまい、(一気見が主に)その代わりに『プリンセスメゾン』、『東京タラレバ娘』、『午前3時の無法地帯』などで女性向け漫画の面白さに気付き始め、ジャンカラで「Q&Aリサイタル」を歌い、快活clubでにやにやしながら講談社の『Kiss』を読むのが趣味となりつつある大学生活折り返し地点です。

 

 閑話休題。今回は、その講談社の月刊雑誌『Kiss』に連載中の漫画『カカフカカ』の感想と考察を述べていきたいと思います。(以下、ネタバレを含みます。)

 

カカフカカ(1) (Kissコミックス)
 

 

 『カカフカカ』は、主人公、寺田亜希(フリーター)が同棲相手に捨てられて、行き着く先もないのでシェアハウスを始めたら、シェアハウス先にたまたまお互いの初体験相手の男子、本行智也(小説家)が居て、その本行は2年ほどED(性的不能)が続いていたにも関わらず、なぜか寺田に対しては反応してしまい、そのことを打ち明けて本行の元気さを取り戻すために二人が添い寝を繰り返す…というお話です。

f:id:Sho-Gaku:20180212033838p:plain

 ↑本行と寺田

 シェアハウス仲間として、本行の理解者であり(本行のゆるさが気に入った)元編集であった長谷太一(編集者)と、本行の小説に惚れ込みそのことを運命だと感じシェアハウスまでこぎつけた栗谷あかり(デザイナー)がいて、長谷が寺田に「恋愛もお見合いもしたくないし寺田さんは手頃でちょうどいいから結婚しない?」となんとも雑なプロポーズをしたりするなどして物語が複雑になっていく、といった具合です。

 

f:id:Sho-Gaku:20180212041153p:plain

f:id:Sho-Gaku:20180212041230p:plain

 ↑↑、↑ちょうどよさでプロポーズする長谷

 さて、つおおつのように結婚や恋愛に無駄にアンテナを貼っている読者の方なら、今までに下線を引いた語句

シェアハウス 添い寝 ゆるさ 恋愛もお見合いもしたくない 手頃でちょうどいい

から、ある本を想像できませんか?

 そう、牛窪恵著『恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(以下本書)です!

 

 

 つおおつは『カカフカカ』についてシェアハウスと添い寝のよさがウリと噂(『Kiss』の読者感想コーナー)で聞き、これはまさか本書で述べられていることが影響してるんじゃないかと慌てて単行本で読み始めたら、つおおつの想像を遥かに超えたレベルで本書の記述している現代恋愛の特徴や、筆者が提唱したこれからの結婚のあり方、「連帯結婚」を反映したキャラクター・描写・設定が随所に出てきて驚きました。

 

 まずあげられるのは「シェアハウス」という舞台設定。寺田はシェアハウスによって、初期費用0でしっかりした家に住めたばかりか、長谷からアルバイトを斡旋してもらうことでとりあえずの収入は確保しているという状況です。また本行は自分の生活力のなさを他のシェアハウス仲間に救ってもらっている、寺田は4人分のご飯を作っているなど、まさに「連帯」の場となっています。

 

 そして次に、そのシェアハウスを通じて、寺田のもつちょうどよさに気付いた長谷が、寺田にプロポーズをするわけですが、長谷は少なくとも最初はそこに恋愛的要素を見出しておらず、まさに本書で牛窪が提唱した連帯結婚、

子どもの頃からケータイやネットを通じ、周りとゆるくつながってきた彼ら。我々大人たちの何倍も、ひとりでいるのが怖いはずだ。だかそれならなぜ大人たちは、恋愛と切り離した「連帯結婚」を、もっと後押ししないのか。恋愛力やコミュ力、あるいは経済力が十分でなくても、男女が気軽に連帯できる、多様な形の多様婚を。認めようとはしないのか(本書,p317-318)

が試みられようとしていると言えるのではないでしょうか。

 

 さらに面白いのが、長谷はいつまでも子離れできない過保護な母親に対して機械的に反応することでいい子を演じていました。

f:id:Sho-Gaku:20180212042827p:plain

 ↑↑話を聞かない長谷の母親

f:id:Sho-Gaku:20180212042924p:plain

  ↑機械的な反応をとりはじめた長谷(幼少期)

 これ自体も本書にて指摘されている「子どもを猫可愛がりしてしまう親と甘えているようで親にあわせてあげている子ども」

中学どころか高校、大学生になっても、まだ息子と入浴したり同じ布団で寝ているという、母親たちの声。(中略)では、思春期の息子の側はどうか。母親の裸を見て、何とも思わないのか。以前、中学・高校生の息子たちにも何人か話を聞くと、こんな答えが返ってきた

「だって、『入らない』なんて言うと、お母さんが淋しがる」

「せっかくの愛情をはねつけるみたいで、イヤとは言いにくい」

ハッとした。ちょうどそのころ、精神科医で医学博士でもある斎藤環氏に、こんな言葉を聞いたからだ。

「いまの若者は、親にしがみついているわけではない。甘えているようで、むしろ親に気を遣っているのだ」

が反映されていて、大変興味深いですね。

 このほかにも『カカフカカ』と本書の結びつきはたくさんあるのですが、枚挙に暇がないので別記事で扱うことにして、今度は『カカフカカ』の作者である石田拓実さんにとって、この作品がどういった位置づけであるのかを、『東京タラレバ娘』『海月姫』でおなじみの東村アキコさんとの対談*1を引用して、また5ch(旧2ch)の石田拓実スレの勢い*2*3*4を踏まえて考えてみましょう。

──東村さんは石田さんが「Kiss」ではじめられた連載『カカフカカ』はどう思われましたか?

東村: まあ石田先生は時代がそろそろ追いついてくると思ってますよ。早すぎたね、ちょっと。だいぶ早かった。ま、ぼちぼち追いついてくるでしょう、時代も。

石田: 早すぎたか。だいぶ描いているけど。

東村: とにかく、私は石田さんの描くヘンテコな少女漫画が好きで、もっといろんな人に読んで欲しかったの。だから、私の結婚式で石田さんのことを好きな「Kiss」の編集さんと同じ部屋にした。そうしたら「Kiss」に誘われて、たぶん描くなって思って勝手に部屋割りで石田拓実をプロデュースしたっていう。

石田: で、その流れに乗りました。

東村: てか、デビューした出版社から外に出たの初めてでしょ。どう?

石田: クソ緊張した。そして、今もしてる。

東村: でもはまってよかったよね。

石田: はまってますか!?

東村: はまってるよ、はまってる。あなたの生臭いところ、いい感じに出てるよ『カカフカカ』。(←後輩なのに上からby東村)

(中略)

東村: そうだ! 石田拓実には伸びしろがある! 20年やってるけど、映画『タイタニック』でいうとまだディカプリオがトランプやってるシーンだから。石田さんには誰も描いたことのないこと、みんなが考えてなかったことを、「そこか!」みたいに漫画で描ける人。何年も後輩の私がいうのもなんですけど(笑)。伸びしろあるうえに、やっと時代が追いついてきてる。やっと時代が、石田さんの天パの後ろ髪にかすってきてる。だから、頑張って描いてください、これからもいっぱい。締切やばいときは手伝いに行きますんで、先生。私は締切、きっちり早めに終わるんで(笑)。

  この対談で東村さんは時代が石田さんの作品に追いついてきたと言っておりますが、実際に5chのスレの勢いを見てもそれは間違いではなく、

1スレ目:2002/10/15-2006/03/10で1000res,0.805res/day

2スレ目:2006/03/09-2013/01/07で798res,dat落ち 0.32res/day

3スレ目:2016/04/10-2018/02/08で508res,0.753res/day

  と、なっていて、これだけ見ると昔の方が勢いを保っていたように思えますが、2007年と2017年に少女漫画板全体に書き込まれた回数を比較してみると、*5によれば2017年は2006年の総書き込み数の1/4以下(1/4.4487)となっており、3スレ目は相対的に0.753*4.4487/0.805≒4と、相対的に見て以前の4倍の勢いを持っていると言えます。よって、石田拓実さんは、もともと界隈では有名であったけれど、今まさにもっと大きな流行りが来ている作家さんであると言って過言ではないでしょう。

 そしてこの事がどういった意味を持っているかと言えば、本書(『恋愛しない若者たち』)で述べた事柄が多々当てはまる『カカフカカ』(石田拓実さんの作風*6)が今までよりも多くの人々の心を掴んでいる*7ということは、帰納的に本書が述べている事実が間違っていないということ、そして本書の指摘している現在の、また本書の提案しているこれからの恋愛・結婚のあり方を肯定的にとらえている人が増え始めたことを補強しているということです。

 

 いかがだったでしょうか。今回は恋愛に関する事実や提案をまとめた本と、それに類似したシーンが多数出てくる少女漫画を比較して、『カカフカカ』に『恋愛しない若者たち』の述べている現代恋愛に当てはまっているシーンが多数出てくることを示すとともに、『カカフカカ』の作風が人気になりつつあることにより、帰納的に『恋愛しない若者たち』の主張を補強してみました。

 

 最後に、『カカフカカ』のおすすめポイントとして、つおおつのような男性から見ても違和感なく、かわいく思える女性キャラの見た目もあげておきます。。。

 

f:id:Sho-Gaku:20180212060215p:plain

 あかりさんかわゆすぎ問題。(問題の間主観化)

*1:

東村アキコが断言「世間は石田拓実のヘンテコな漫画を求める!」|今日のおすすめ|講談社コミックプラス

*2:

***石田拓実***

*3:

***石田拓実2***

*4:

【カカフカカ】石田拓実3【トライボロジー】 [無断転載禁止]©2ch.net

*5:

少女漫画板(gcomic)の書き込み数

*6:『カカフカカ』以外は1作品しかまだ読めていないため要研究であるが、石田拓実さんの作風はあまり変わっていないらしい

*7:『カカフカカ』は累計100万部を突破したようです。この作品以外の石田拓実作品がどれくらい売れているかの資料が見つからなかったので、売上による比較は今回はいたしておりません。そのため5chの書き込みの勢いを比較するという手法を用いました。