小文化学会の生活

Soliloquies of Associate Association for Subculture

電子感想戦 第1回 田山花袋『少女病』(1)

 秋本番となってきましたね。食欲もスポーツも魅力的だけど、小文化学会としてはやはり読書の秋です。そんなわけで、シャレというわけでもないですが文化の日に初の試み、電子感想戦を行いました。事前に課題作を読み、ネット上で意見を交わす挑戦にどうなるかと心配しましたが、結果的に予想以上の盛りあがりを見せ、話は2日間にわたりました。長くなってしまったので分割し、順次アップしていきたいと思います。記念すべき第1回は、1907年発表の田山花袋少女病』。100年以上前の作品ながら、いまでも新鮮な作品。読めば読むほど新しい発見がありました。

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『「地の塩」殺人事件』と湾岸戦争の関係

Ⅰ. 概要

 このレポートでは、イスラエル人作家シュラミット・ラピッドによる『「地の塩」殺人事件』(1992)という作品における推理小説という形式と湾岸戦争の描写の関係について考察する。

 まず、『「地の塩」殺人事件』の推理小説としてのプロットについてⅡで説明する。次に、『「地の塩」殺人事件』における湾岸戦争の描写についてⅢで説明する。更に、湾岸戦争そのものについてと、当時有名になったジャン・ボードリヤールによる『湾岸戦争は起こらなかった』(1991)という本についてⅣで確認する。最後に、推理小説という形式が湾岸戦争の真実を伝えるのに効果的に作用していることをⅤで説明する。

 このレポートは、2017年度に慶應義塾大学で開講された総合教育セミナーⅡを下敷きとして作成された。

 

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人工知能は世界の論理を解明出来るか

 医学系の大学に入学してはや二か月。毎日の学習や定期考査など、学問が軌道に乗ってきた頃である。文系脳の僕にも理解できるような、素晴らしい理系の授業をなさる先生方にはとても感謝している。同時に、人間関係も多様となった。良好な関係の者もいれば、未だによくわからない者もいる。自分がその人でない以上、完全にその人の気持ちを推し量ることは出来ない。

 ついでに六年間男子校出身の僕が女性の気持ちを推測するのは至難の業である。仲の良い友人と話すことのない同期との差は、経験論的な交流の頻度の差なのであって、大事なのは人間関係に完全がないということを踏まえたうえで不断の努力をすることなのだ。不完全でもその人を知れば新たな発見があるかもしれないし、役立つことだってあるかもしれない。そんなことを考えながら、今日も僕は近くの人とのコミュニケーションを図る。

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差別とヘイトが溢れかえる世界の行き着く未来に希望はあるのか?”〜迫害されながらも共存を求め戦い続けるマイノリティヒーローたちから学ぶこと〜”

 久々の投稿となります。さて皆さんはX-MENというアメコミのヒーローチームをご存知でしょうか?アメコミの2大巨頭の一角とも言うべきMARVEL社の看板ヒーローチームの一つで同名コミックの主人公たちです。

 

 簡単に紹介させていただきますと1963年に原作スタン・リー、作画ジャック・カービーというMARVEL社の黄金コンビによりX-MENは創造されました。当初は低人気だったようですが1975年にチームを再編成してから爆発的に支持を得たこともあり2012年の時点で1冊の売上が世界一のコミック(*1)となっています。また、アニメシリーズが制作されたり2000年より20th Century Foxより実写映画化がスタートしこちらも現在に至るまでの17年間にスピンオフ作品も合わせて10作品制作されており2017年6月現在、最新作であり17年間大人気キャラクターウルヴァリンを演じてきたヒュー・ジャックマン氏とX-MENの創設者であるプロフェッサーX役のパトリック・スチュワート氏の卒業作である『LOGAN』が日本でも公開されており、翌年2019年には新たに3作品が公開されることがアナウンスされているアメコミ実写映画ブームの火付け役であり牽引役とも言うべき一大ビッグシリーズとなっています。

 

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-俺の政権がこんなに出会い系バーに厳しいわけがない-空振り安堵と坂口安吾

おはようございます。つおおつです。
最近政治が面白いですね。
 個人的には、都政も国政も本当にやんなきゃいけないことそっちのけだなあという感想しかありませんが、一つ気になったことがあったので記事を書かせていただきます。それは、前川喜平前文部科学事務次官の出会い系バー報道についてです*1

 

 公人*2と性。これは古今の東西を問わず、問題にあがってくることですね。

 

 今回はこの問題を議論するにあたって、たまたまつおおつが読んだことのある坂口安吾が1950年に書いた*3エッセイ、『安吾巷談 02 天光光女史の場合*4』を参考にしつつ議論していきたいと思います。

*1:なんのことかわからない方は、http://archive.is/ZnvAy を参照

*2:まず、既に事務次官を辞めた人が公人にあたるのかについては議論の分かれるところですが。

*3:この文章の初出は1950年2月1日の、「文藝春秋 第二十八巻第二号」です。

*4:青空文庫で読めます。 坂口安吾 安吾巷談 天光光女史の場合

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新年度の挨拶

 平成29年度になりました。1年生のみなさん、ご入学おめでとうございます。進級したみなさん、今年度も引きつづき頑張っていきましょう。留年したみなさん、以下同文です。

 さて、この時期にキャンパスへ行くとべたべたと壁にビラを貼っているのが見られます。サークルの勧誘ですね。あのひとごみが懐かしいという方も多いはずです。私もそのひとりです。新入生の方は電話番号を求められたら大学の学事の番号を教えておきましょう。LINEを求められたらインターネットで適当に見繕ったおじさんのアカウントを教えるとおじさんは若い子と知りあえるわサークルは団員が増えるわでみんな平和になります。

 ところで、小文化学会はなんか勧誘活動をしないのかと気になる方がいらっしゃるかもしれません。いるかいないかはさておき、当会はその類を行いません。ビラを貼るにも大学で勧誘活動するにも、認可がないサークルには居場所がないのです。

 しかし、現代はとてもそういう活動がしやすい環境がそろっています。ありがたいことです。こちらが一方的に伝えるばかりでは入りにくいと考えた結果、当会は窓口となるLINEアカウントを設けることにしました。

 

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 こちらをフォローしていただくと、当会とコンタクトを取ることができます(たぶん)。たぶんというのはまだ実際にしていないので分からないのです。申し訳ない。

 あと、askとかいうものをやることにしました。

ask.fm

 こちらに質問していただいても構いません。

 当会は、いってみれば開かれた思想のプラットフォームです。あなたが大衆と思わないものであればなんだって当会は受けいれます。活動が定まっていないのでやりたいことがあれば提案してくださってもOKです。まずはお気軽に声をかけてください。そこからあなたの探求と発信の旅が始まるはずです。

暗渠のすゝめ

 

 はじめまして、エチゴニアといいます。このような記事を書くのは初めてでして、無作法には御容赦ください。

 

 まず最初に

 この記事は暗渠を知らない人に、私なりの暗渠の魅力を伝えるために書いています。なのでできるだけ簡潔に(あるいは乱暴に)最初から説明するつもりです。

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プリンセスメゾンのススメ―沼ちゃんが教えてくれる東京の新しい生き方―

 はじめまして。つおおつと申します。

 2016年は例年と同じように、いろんなアニメが放送され、いろんな作品が話題になりました(総花的)。しかしこのつおおつ、残念ながらそういう文化の波に去年はまったく乗れませんでした。

 仕方ないですね、初めての一人暮らし(+大学)というのは毎年アニメを欠かさず見てる人が定期的に見れなくなるくらいの大変さを持っていますから。

 しかしそんな私にも一つとてもビッグなことがありました。

 そう、kindleの購入です。

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2017年の挨拶

 あけましておめでとうございますというにはやや時期を逸しました。寒い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。私はC91で買った同人誌をすべて読み切る前に期末考査へ突入しようとしています。

 唐突ですが、9月の時点で私が考えていた構想を再掲します。

2017年1月

・2016年秋アニメに関する記事の投稿

・小学の会員がインターネット上で交流できるグループを作る(それが実現可能なほどの会員を集める)

・論文形式の記事の投稿を開始する

 ……見事に現像されなかった青写真になっていますね。あまりよろしくないです。

 もちろんこうなったのは忙しさにかまけて記事を投稿できなかったからなのですが、他にも積極的な認知活動をしていなかったから、というのがあります。というか、それしかないです。

 私だけで活動しているというのも一因なのかもしれません。その解決策として特撮等に深い知見を持っている友人に頼んで年末に2本記事を投稿してもらいました。僕は門外漢なのですが、「小文化」を掲げているからにはあらゆる文化を受け入れたいと思っています。

 それらのプラットフォームの役割を十二分に果たすためにも、ぜひ多くの方に参加していただきたいのです。「小文化」という名称で避ける方もいるかもしれません。しかし、いわゆる大衆受けしないものにこそライトをあてる価値があると、私は信じています。「小」とは卑屈な自嘲でも無理解な軽蔑でもなく、むしろこんなに面白くて奥が深いことを受け入れない世の中は馬鹿げている! と言えるぐらいに開き直ろうという気概を込めている(つもり)なのです。

 ただ、声高に馬鹿げていると主張しても無意味です。きちんと論立てていくからこそ真価が理解されるのです。もちろん、すでにある評論系の大学サークルとの差異が明確になっていないのも参加なさる方がいらっしゃらない理由のひとつになっているのでしょうが、あえて独自色は今のところ出さず「来る者は拒まず」の精神でやっていきたいと思いますので、少しでも興味ある方、なかなか日の目に当たらないジャンルについて真剣に伝えたいという方はこちらのコメント欄か、小学のメールアドレス(shobunkagakkai☆gmail.comの☆を@に変更)に連絡を頂ければ幸いです。なんだか挨拶ではなくお願いになってしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。新しい記事は鋭意製作中です。

 

 

 

 

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』から感じた”静かな侵略”の恐ろしさと”自由を勝ち取ること”の素晴らしさ

 2度目の寄稿になります。(恐らく、今年最後の投稿になるのではないでしょうか?来年も少しずつこの活動を盛り上げていけるといいですね。)

 今回は執筆者が数あるアメコミ実写作品の中で最も好きな作品の一つである『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を考察したいと思います。

 

 考察を始める前に”キャプテン・アメリカ”というキャラクターの簡単な説明をさせていただきます。キャプテン・アメリカを知らない人が抱くイメージの多くは恐らく、”なんか盾が強いらしい愛国者”だと思うのですがこれは誤解で、彼が忠誠を誓っているのはあくまでアメリカという国やアメリカ軍という組織ではなく”自由”と”博愛”を重んじるアメリカン・スピリッツの精神です。どちらか(なお、今回紹介するのはマーベル・コミックの実写映画シリーズであるMCUシリーズ内での設定です。)

 

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